生理物質
- 生理物質を陰陽に分けると陰は血・津液・精、陽は気に分類される
精の生理
精:人体の構成や生命活動を維持する最も基本的物質
- 精には父母から受け継いだ先天の精と飲食物を摂取して得られる後天の精(水穀の精)がある
- 精は腎に貯えられる
- 精の作用には生殖・滋養・血への化生・気への化生・神の維持がある
- 精が不足した病証を精虚(腎精不足)という
- 精虚には発育不良・不妊・耳鳴り(難聴)・健忘・虚労・早老・白髪・脱毛・歯や骨の軟弱化・尿漏れがある
気の生理
気:人体を構成し生理活動の原動力となる
- 気には先天の精から化生さた原気と後天の精から化生された宗気・営気・衛気がある
- 気の作用には温煦作用・固摂作用・防御作用・気化作用がある
- 気の虚証には気の不足による気虚と、気虚+気の上昇不能による気陥と、気虚が極限までに悪化した気脱がある
- 気の実証には気の滞りによる気鬱・気滞と、気の上昇運動過度・下降運動不十分による気逆がある
先天の気
- 腎の先天の精から化生した気
- 生命活動の原動力となり、組織・器官の機能を十分に発揮させる
後天の気
- 後天の精から化生した気
- 飲食物から得られる
気の生成・機能・部位
分類 | 生産材料 | 機能 | 部位 |
宗気 | 水穀の気+自然の清気(酸素) | 肺の呼吸、心の血液循環の駆動、発声 | 胸中 |
営気 | 水穀の精気→陰性の気 | 血の素、栄養素 | 脈中 |
衛気 | 水穀の悍気→陽性の気 | 体表防御、外邪侵入を防ぐ、体温調整、発汗 | 脈外 |
原気 | 先天の気、後天の気により滋養される | 生命活動の原動力、生体の発育、成長を推動する | 腎中 |
原気(元気)
- 人体最も根本的な気
- 生命活動の原動力
- 先天の精から化生され三焦を通って全身に分布する
- 臍下丹田に集まる
宗気
- 水穀の精微(栄養)と精気(酸素)によって化生された気
- 胸中に集まり、心肺の活動を支える(呼吸・血の運行を促進する)
営気
- 組織・器官の活動を支える気
- 津液を血に変化させる
- 豊かな栄養分を持ち、血の一部として脈中に入り全身を巡る
衛気
- 体表(昼)と体内(夜)を巡る活動性の高い気
- 活動性が高く動きが速く、外邪の侵入を防ぐ
- 全身を温め養い腠理を(防衛・発汗調節)する
気の作用
推動作用
- 成長・臓腑の生理機能を促進する作用
- 血や津液を巡らせる(行血・行津)
温煦作用
- 臓腑や器官などの組織を温め体温を保持する作用
防御作用
- 体表を保護し外邪の侵入を防ぐ作用
固摂作用
- 生理物質を流失するのを防ぐ作用
- 血や津液を固摂する(摂血・摂津)
気化作用
- 気から生理物質に変化させる作用
- 排泄物を生成する作用
- 血や津液を生み出し(生血・生津)
血の生理
血:血脈中を流れる赤色の体液で豊富な栄養分を有し全身を滋養する
- 血の作用には滋養と神の維持がある
- 血の虚証には血の不足による血虚がある
- 血の実証には血の運行失調による血瘀と熱の影響を受けた血熱がある
津液の生理
津液:体内における正常な水液の総称で全身を潤し養っている
- 津液の作用には滋潤・濡養・血脈を満たす
- 津はさらさらした体液(汗・涙・尿など)
- 液は粘りのある体液(骨髄・粘液)
神
神:生命活動の総称
- 精神活動
- 神志・心神
- 精神・意思
国家試験過去問
特に捻った難しい問題はなく、生理物質の働きと機能を覚えおけば答えられます。
精の問題
第21回-94
生体の活力として働く気の類に含まれるのはどれか。
- 体
- 魂
- 精
- 血
第21回-101
腎精の不足が最も疑われるのはどれか。
- 食欲不振
- 不妊
- 息切れ
- 目のかすみ
気の問題
第27回-89
気について正しいのはどれか。
- 宗気は臍下丹田に集まる。
- 衛気は臓腑を温める。
- 営気は呼吸を推動する。
- 原気は津液を血に変化させる。
第13回-97
気について誤っている記述はどれか。
- 衛気は水穀の精気のことをいう。
- 宗気は胸中に集まる。
- 真気は温煦作用を持つ。
- 営気は血とともに脈中を流れる。
第23回-92
元気の説明で正しいのはどれか。
- 夜間に人体の陰の部を二十五周する。
- 清気とも言う。
- 血とともに脈中を行く。
- 先天の精が変化生成したものである。
第1回-98
胸中に宿る気はどれか。
- 気
- 衛気
- 宗気
- 元気
第11回-99
宗気について適切なのはどれか。
- 栄養を主る。
- 脈外をめぐる。
- 経絡の機能を維持する。
- 胸中に宿る。
第24回-91
肺に作用して発声・呼吸を推動するのはどれか。
- 元気
- 宗気
- 衛気
- 営気
第16回-94
衛気について誤っているのはどれか。
- 分肉を温める。
- 陰性の気である。
- 脈外をめぐる。
- 腠理を開闔する。
第23回-90
後天の精から得られた水穀の悍気はどれか。
- 営気
- 衛気
- 胃気
- 宗気
第2回-98
脈外をめぐる気はどれか。
- 衛気
- 宗気
- 営気
- 経気
第12回-99
外邪に対する防御的役割をするのはどれか。
- 衛気
- 経気
- 営気
- 宗気
第7回-97
衛気について誤っているのはどれか。
- 先天の精から得られる。
- 腠理の開闔を行う。
- 水穀の悍気のことをいう。
- 脈外をめぐる。
第31回-93
三焦を通って臓腑の気になるのはどれか。
- 営気
- 宗気
- 原気
- 衛気
第25回-91
三焦を通って全身に分布する気はどれか。
- 衛気
- 営気
- 原気
- 宗気
第7回-102
気滞の症状でないのはどれか。
- 胸苦しい
- イライラ
- 腹部の脹った痛み
- 息切れ
第11回-105
気滞の症状はどれか。
- 目のかすみ
- 出血
- 脹痛
- 手足のしびれ
第30回-104
次の文で示す患者の病証で最も適切なのはどれか。 「46歳の男性。主訴は肩こり。1年以上テレワークで外出機会が減少し、ストレスを感じている。胸肋部痛と喉のつかえ感を伴う。」
- 湿熱
- 気滞
- 血虚
- 陰虚
血の問題
第10回-98
血について誤っているのはどれか。
- 営気と共に脈中を流れる。
- 肝、心との関係が深い。
- 体表部を潤し体温調節に関与する。
- 後天の精から造られる。
第15回-94
血について誤っている記述はどれか。
- 心によって推動される。
- 脾が各器官に配分する。
- 営気とともに脈中をめぐる。
- 肝に貯蔵される。
第22回-92
血の説明で正しいのはどれか。
- 温煦作用により循環する。
- 生成に営気が関与する。
- 量は脾が調節する。
- 衛気と共に脈中を流れる。
第8回-101
血を生成し、血とともに脈中をめぐる気はどれか。
- 衛気
- 営気
- 清気
- 臓気
第28回-91
脈中を行き、血をめぐらすのはどれか。
- 宗気
- 営気
- 原気
- 衛気
第8回-99
血を脈外に漏らさないようにするのはどれか。
- 温煦作用
- 固摂作用
- 防御作用
- 推動作用
第21回-93
血を脈外に漏らさないようにするのはどれか。
- 気化作用
- 推動作用
- 温煦作用
- 固摂作用
第30回-92
血瘀の症状はどれか。
- 筋けいれん
- 色素沈着
- 視力減退
- 顔面蒼白
第19回-97
「55歳の女性。皮下出血しやすく、皮膚はかさつき、腹が脹る。月経時に血塊を伴う。」 最も考えられる病証はどれか。
- 気逆
- 水滞
- 瘀血
- 血虚
津液の問題
第6回-99
津液について誤っているのはどれか。
- 骨に潤いを与える。
- 脈中を流れる。
- 脳髄を養う。
- 皮膚に潤いを与える。
第12回-100
津液について誤っているのはどれか。
- 皮膚を潤す。
- 心により代謝が促進される。
- 水穀から分離される。
- 体温調節に関与する。
第20回-93
津液について正しい記述はどれか。
- 津液は腎と膀胱で生成される。
- 津液が停滞する病理変化を津傷という。
- 津液の代謝機能を三焦気化という。
- 津液は経脈を通じて全身に流れる。
第2回-102
津液の代謝に関係しない臓腑はどれか。
- 脾・胃
- 腎・膀胱
- 肺・大腸
- 肝・胆
第29回-95
津液の停滞による症状はどれか。
- 口渇
- しびれ
- 盗汗
- 下痢
第19回-99
津液の不足による症状はどれか。
- 小便自利
- 目眩
- 口渇
- 自汗
第22回-97
運行が失調すると鼓脹を認めるのはどれか。
- 衛気
- 血
- 営気
- 津液
神の問題
第31回-92
成長や生殖活動を行うもととなる基本的な物質の生理作用で最も適切なのはどれか。
- 体温を一定に保つ。
- 神を維持する。
- 血脈を満たす。
- 呼吸を推動する。
第1回-102
誤っているのはどれか。
- 思は脾を傷る。
- 喜は心を傷る。
- 恐は肝を傷る。
- 憂は肺を傷る。
第4回-98
五志に含まれない七情はどれか。
- 悲
- 喜
- 怒
- 恐
第10回-103
肝を傷る七情はどれか。
- 怒
- 憂
- 恐
- 喜
第12回-104
七情で腎を傷るのはどれか。
- 思
- 恐
- 怒
- 悲
第30回-96
気機を上昇させる特性をもつ五志に損傷されやすい臓の症状はどれか。
- 目のかすみ
- 歯のぐらつき
- 皮膚の乾燥
- 不整脈