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広告 東洋医学

国家試験対策~はり理論~

2024-08-16

🌟鍼の基礎知識~鍼尖の形状~

鍼治療の効果や手技の適応を左右する重要な要素のひとつが「鍼尖の形状」です。鍼尖の形にはいくつかの種類があり、それぞれ刺入感や適応する刺鍼法に違いがあります。

国家試験では「撚鍼法に適している鍼尖は?」「管鍼法で用いられる形状は?」といった形で出題されることが多いため、見た目の違いだけでなく、刺鍼操作との関係も含めて理解することが重要です。

鍼尖の種類と特徴

  • スリオロシ形
    • 打鍼法で用いられる
    • 鍼体の途中から細くなっており、末端が鋭く尖っている
  • ノゲ形
    • 現在は製造されていない
    • 鍼尖の上部1.5cmあたりから細くなる形状
  • 柳葉形
    • ノゲ形と松葉形の中間の形状
    • やや鋭利で、撚鍼法に適している
  • 松葉形
    • ノゲ形を少し丸くした形状
    • 管鍼法に適している
  • 卵形
    • 卵のように丸みを帯びた柔らかい形
    • 刺入時の刺激が少なく、皮膚にやさしい

鍼尖の形状は、刺入時の「痛みの軽減」や「適切な刺激量の調節」に直結します。撚鍼法(ねんしんほう)は鍼を左右に回転させながら刺入・抜鍼する技法で、柳葉形のように少し鋭利な形が適しています。

一方、管鍼法(かんしんほう)は鍼管を用いて叩きながら刺入する技法であり、滑らかで丸みのある松葉形が好まれます。

国家試験では「次のうち撚鍼法に適する鍼尖形状はどれか?」などの選択肢問題が頻出ですので、形状→手技→使用感までをリンクさせて記憶しましょう。

また、形状の並び順「スリオロシ → ノゲ → 柳葉 → 松葉 → 卵形」は、鋭利から鈍に向かう順番として覚えると効果的です。

ゴロ合わせで覚えるとしたら「スノやま(柳葉)のまつたま(松葉→卵)」といった語感で覚えておくと、試験直前でも引き出しやすいですよ。

🔑 ワンポイントまとめ

・撚鍼法 → 柳葉形

・管鍼法 → 松葉形

・打鍼法 → スリオロシ形

第3回-149

打鍼法で使用する鍼の鍼尖の形状はどれか。

  1. スリオロシ形
  2. ノゲ形
  3. 松葉形
  4. 卵形

第6回-143

撚鍼法に適した鍼尖の形状はどれか。

  1. 柳葉形
  2. スリオロシ形
  3. 卵形
  4. ノゲ形

第18回-144

撚鍼法に適した鍼尖の形状はどれか。

  1. 柳葉形
  2. 松葉形
  3. ノゲ形
  4. 卵形

第10回-143

管鍼法に適した鍼尖の形状はどれか。

  1. 卵形
  2. ノゲ形
  3. 松葉形
  4. スリオロシ形

第17回-142

管鍼法に最も適した鍼尖の形状はどれか。

  1. 卵形
  2. 松葉形
  3. スリオロシ形
  4. ノゲ形

第24回-141

撚鍼法の刺入時に抵抗感が最も強い鍼尖の形状はどれか。

  1. 柳葉型
  2. 卵型
  3. 松葉型
  4. ノゲ型

第31回-162

松葉形の鍼尖形状について正しいのはどれか。

  1. 卵形とスリオロシ形の中間
  2. スリオロシ形と柳葉形の中間
  3. 柳葉形とノゲ形の中間
  4. ノゲ形と卵形の中間

🌟鍼の基礎知識~鍼体長と鍼体径~

鍼治療において、鍼の「長さ」と「太さ」は、刺鍼のしやすさや治療効果、患者の刺激の感じ方に大きく影響します。

国家試験では、鍼体長(長さ)鍼体径(太さ)の基準値や番手の対応が問われることがあるため、しっかりと整理して覚えておくことが重要です。

まず、鍼体の「長さ」は「寸(すん)」という和尺で表されます。

「1寸」は約30mm(3cm)とされ、1寸3分(すんさん)や2寸などもよく使われます。

一方、「太さ」は「番手(0番~5番など)」で表記され、数字が大きいほど太くなります。

鍼体長の代表的な長さ

1寸30mm
1寸3分(寸3)40mm
1寸6分(寸6)50mm
2寸60mm
2寸5分75mm
3寸90mm
鍼体長

鍼の長さは、部位や施術目的によって使い分けられます。

たとえば、腹部や臀部などの深部刺鍼には「2寸」以上の長鍼が使われることもあります。

一方、顔面部や指など浅い部位では「1寸」前後の短い鍼が選ばれます。

鍼体径の番手と号数の対応表

0番鍼0.14mm:14号
1番鍼0.16mm:16号
2番鍼0.18mm:18号
3番鍼0.20mm:20号
4番鍼0.22mm:22号
5番鍼0.24mm:24号
鍼体径

鍼体径は刺激量や痛みの感じやすさに直結します。

細い鍼(0番〜1番)は刺激が少なく、敏感な部位や初診の患者に適しています。

一方、3番鍼(0.20mm)は汎用性が高く、最も多く使われる太さとして国家試験でも頻出です。

🔑 覚えておきたい!

3番鍼=0.20mm(20号)

国家試験で頻出の基本値です。

また、臨床では番手だけでなく、患者の体格や症状、使用する刺鍼法(例:管鍼法や撚鍼法)によっても適切な太さや長さを選択します。

刺激に敏感な方や美容鍼灸の施術では、0番鍼(0.14mm)など極細の鍼が用いられ、痛みや出血のリスクが少ない点で好まれています。

寸とmmの換算、番手と号数の対応は表と合わせて記憶し、即答できるようにしておきましょう。

第8回-143

1寸6分の3番鍼の太さと長さとの組合せで正しいのはどれか。

  1. 0.17㎜ ─── 60㎜
  2. 0.17㎜ ─── 50㎜
  3. 0.20㎜ ─── 50㎜
  4. 0.20㎜ ─── 60㎜

第21回-141

毫鍼の規格で正しい組合せはどれか。

  1. 2寸・5番鍼 ───── 70mm 24号鍼
  2. 1寸3分・2番鍼 ─── 40mm 16号鍼
  3. 1寸6分・1番鍼 ─── 50mm 15号鍼
  4. 1寸・3番鍼 ───── 30mm 20号鍼

第27回-141

2番鍼の太さはどれか。

  1. 0.16mm
  2. 0.20mm
  3. 0.18mm
  4. 0.14mm

第31回-161

2寸5番鍼を使用し、皮膚面に対し直刺で鍼体長の半分まで刺入したときの深度はどれか。

  1. 20mm
  2. 30mm
  3. 35mm
  4. 25mm

🌟鍼の基礎知識~毫鍼(ごうしん)~

毫鍼(ごうしん)は、現代の鍼灸施術で最も一般的に使用されている鍼です。

古代九鍼の中にも分類されており、「皮膚を破って体内に刺入する鍼」の代表格として位置づけられています。

国家試験でも「毫鍼の特徴」「撚鍼法との関連」などが頻出ですので、しっかりと理解しておきましょう。

毫鍼は、細長くて柔軟性があり、体表から筋層まで比較的スムーズに刺入できるのが特徴です。

現在、ほとんどの鍼灸院で用いられているディスポーザブルタイプ(使い捨て鍼)はすべて毫鍼に分類されます。

毫鍼の構造と材質

  • 鍼尖:先端部。刺入のしやすさに直結し、丸みを帯びた松葉形が多い。
  • 鍼体:細くて弾力性のあるステンレス鋼や銀合金が主流。
  • 鍼柄:刺入・抜鍼の際に操作を加える部分。巻柄タイプやプラスチック製もある。

鍼体の太さ(鍼体径)は0番〜5番まであり、細いほど刺激が穏やかになります。

長さ(鍼体長)は一般的に1寸〜1寸6分が多く用いられています。

毫鍼と刺鍼法の関係

毫鍼は主に以下のような刺鍼技術と組み合わせて使用されます。

  • 撚鍼法(ねんしんほう):鍼を回転させながら刺入する方法。毫鍼の柔軟性と形状が適している。
  • 管鍼法(かんしんほう):鍼管を用いて鍼を打ち込む方法。杉山和一によって確立され、現在では主流となっている。
  • 打鍼法:やや太く短い毫鍼を用いる場合もあるが、主に特殊な技法。

毫鍼の操作では「押手(おして)」と「刺手(ししゅ)」という両手の役割が重要です。

押手は皮膚を固定し、鍼の角度や深度を安定させる役割を持ち、刺手は鍼の操作(刺入、抜鍼、撚り)を行います。

この連携によって、痛みの軽減と的確な刺激が可能になります。

🔑 国家試験ワンポイント

・毫鍼は「刺入する鍼」に分類される

・撚鍼法と管鍼法で主に使用される

・3番鍼(0.20mm)が最もよく用いられる

毫鍼は、肩こり、腰痛、不眠、月経不順、胃腸障害など、幅広い疾患に対応可能です。

現代では、より柔らかく、使いやすく、安全性の高いディスポーザブル鍼が多く、感染予防や衛生管理の観点でも重要な進化を遂げています。

国家試験では「毫鍼の分類」「刺入する鍼に該当するもの」「撚鍼法に適する鍼の名称」などで問われますので、用語・構造・適応法のセットで暗記しておくと得点に直結します。

第23回-141

毫鍼について誤っているのはどれか。

  1. 鍼尖の形状に松葉型がある。
  2. 3番鍼は20号鍼である。
  3. 鍼体長は鍼根から鍼尖までをいう。
  4. 1寸3分の鍼体長は50mmである。

第28回-141

毫鍼について誤っているのはどれか。

  1. 5番鍼の鍼体径は0.26mmである。
  2. 2寸の鍼体長は60mmである。
  3. 鍼尖の形状の一つに卵型がある。
  4. 鍼体長は鍼尖から鍼根までをいう。

第9回-141

金鍼の特徴はどれか。

  1. 酸化しにくい。
  2. 弾力性が小さい。
  3. 刺入痛が出やすい。
  4. 通電に適する。

第25回-141

ステンレス鍼の特徴はどれか。

  1. 低周波鍼通電療法に適する。
  2. 酸化しやすい。
  3. 刺入痛が少ない。
  4. 曲がりやすい。

🌟鍼の基礎知識~古代九鍼~

古代九鍼(こだいきゅうしん)は、古代中国の医書『黄帝内経』に記された9種類の鍼のことです。

それぞれ用途や形状が異なり、「刺さない鍼」「皮膚を破る鍼」「深部に刺入する鍼」という3つの視点から分類されます。

現代の毫鍼と違って、切開や排膿、マッサージ的な用途も含まれており、鍼というより外科器具に近いものもあります。

古代九鍼図

古代九鍼の分類と用途

  • 刺入しない鍼(皮膚に接触させて用いる)
    • 員鍼(えんしん):先端が丸く、経絡や皮膚を押す用途
    • 鍉鍼(ていしん):先端が平たく、軽くなでるような手技に使う
  • 皮膚を破る鍼(排膿や切開目的)
    • 鈹鍼(ひしん)ようや大きな膿を切り開くためのナイフ状の鍼
    • 鋒鍼(ほうしん):三稜鍼に近い。血を出す刺絡用
    • 鑱鍼(ざんしん):鋒鍼より平らで浅い膿などの処置向け
  • 刺入する鍼(現代の毫鍼に近い)
    • 毫鍼(ごうしん):現代の一般的な細長い鍼の原型
    • 員利鍼(いんりしん):円く鋭い鍼。比較的広く刺激
    • 長鍼(ちょうしん):長さ約7寸(約21cm)で深部刺鍼に使用
    • 大鍼(だいしん):関節にたまった水腫の排液などに使用

このように、古代九鍼は現代鍼灸のルーツとも言える重要な基礎知識であり、国家試験でもたびたび出題されます。

覚え方のコツとしては、「刺さない鍼」「破る鍼」「刺す鍼」という分類で理解し、特に鈹鍼=切開、大鍼=関節水腫、鋒鍼=三稜鍼といった特徴的な鍼をセットで記憶しましょう。

🔑 国家試験対策まとめ

・刺入しない:鍉鍼・員鍼

・皮膚を破る:鋒鍼=三稜鍼

・刺入する:大鍼=関節水腫

また、現代の施術では、古代九鍼のうち「鍉鍼」や「員鍼」のような刺さない鍼が、小児鍼や高齢者への優しい刺激法として応用されています。

特に接触鍼法や皮膚刺激療法では、古代の思想がそのまま活かされています。

名称や用途が古風なため混乱しやすい分野ですが、臨床応用や形状のイメージと結びつけて覚えると忘れにくくなります。

図と一緒に暗記し、過去問で実践することで知識が定着します。

第2回-141

古代九鍼の用法のうち摩擦や圧迫を目的とした鍼はどれか。

  1. 鍉鍼
  2. 鈹鍼
  3. 毫鍼
  4. 鋒鍼

第17回-143

古代九鍼のうち圧迫を目的とするのはどれか。

  1. 員利鍼
  2. 毫鍼
  3. 鋒鍼
  4. 鍉鍼

第11回-141

古代九鍼のうち皮膚刺激を目的とするのはどれか。

  1. 員利鍼
  2. 毫鍼
  3. 鋒鍼
  4. 円鍼

第14回-144

古代九鍼の中で小児鍼のもとになったのはどれか。

  1. 円鍼
  2. 大鍼
  3. 毫鍼
  4. 鈹鍼

第4回-143

古代九鍼の鋒鍼と同じ目的の鍼はどれか。

  1. 三稜鍼
  2. 円皮鍼
  3. 皮内鍼
  4. 小児鍼

第19回-141

三稜鍼に相当する古代九鍼はどれか。

  1. 員利鍼
  2. 大鍼
  3. 員鍼
  4. 鋒鍼

第5回-144

古代九鍼で皮膚切開などに用いられたのはどれか。

  1. 鈹鍼
  2. 円鍼
  3. 毫鍼
  4. 鍉鍼

第8回-141

次の古代九鍼のうち皮膚を切開するのはどれか。

  1. 大鍼
  2. 長鍼
  3. 鈹鍼
  4. 毫鍼

第9回-144

現行の鍼で古代九鍼と同名のものはどれか。

  1. 皮内鍼
  2. 毫鍼
  3. 三稜鍼
  4. 円皮鍼

第22回-141

古代九鍼で関節水腫の排液に用いられたのはどれか。

  1. 鋒鍼
  2. 鈹鍼
  3. 長鍼
  4. 大鍼

🌟基本的な刺鍼方法

刺鍼の基本操作

鍼治療において、刺鍼の技術は安全性と効果を左右する最も重要な基本です。

国家試験では、「撚鍼法」「管鍼法」「押手と刺手の違い」など、実技に直結する内容が頻出です。

刺鍼の主な3方式

  • 撚鍼法(ねんしんほう)
    • 最も古い刺鍼法で、鍼を左右に回しながら徐々に刺入する
    • 柳葉形の鍼尖が適している
    • 刺入・抜鍼時ともに手技を伴うため繊細な感覚が必要
  • 打鍼法(だしんほう)
    • 御園意斎が確立した日本独自の技法
    • 小槌で鍼を叩打しながら体表に刺激を与える
    • スリオロシ形の鍼を使用
  • 管鍼法(かんしんほう)
    • 杉山和一が考案。鍼管を用いて鍼をスムーズに刺入
    • 現在の臨床で最も広く使用されている技術
    • 松葉形の鍼が適する

刺鍼操作の流れと用語解説

  • 前揉法(まえもみほう)
    • 刺鍼部位を軽く揉んで皮膚や筋肉を弛緩させる
    • 刺鍼への予告や慣れを促し、痛みを軽減
  • 後揉法(あともみほう)
    • 抜鍼後に患部を軽く揉むことで血行促進・痛みの軽減を図る

押手と刺手の役割

  • 押手(おして)
    • 鍼体を支え、刺入部位を安定させる
    • 皮膚の緊張度を調節する
    • 以下の3種類の圧を使い分ける:
      • 左右圧(水平圧):母指と示指で鍼体をつまみ保持
      • 上下圧(垂直圧):皮膚を押さえて刺入抵抗を軽減
      • 周囲圧(固定圧):押手全体で周囲を安定させ、患者の急な体動を察知し動揺を防ぐ
  • 刺手(ししゅ)
    • 鍼を実際に操作する手
    • 刺入の速度を調節し、抵抗を感じ取る
    • 深度や方向を調整して適切な刺激を与える

🔑 国家試験対策まとめ

・撚鍼法=柳葉形/打鍼法=スリオロシ形/管鍼法=松葉形

・押手=固定と圧の調整/刺手=操作と深度調整

基本操作を正しく理解しておくことで、臨床でも安全な刺鍼が可能になります。

特に刺鍼前の前揉法、刺鍼中の押手の圧、刺手のコントロールは、痛みや恐怖心の軽減に直結します。

国家試験では「押手と刺手の役割」「圧の分類」「撚鍼・管鍼・打鍼の比較」などが問われますので、名称と手技のセットで覚えておくと得点につながります。

第4回-142

前揉法について誤っている記述はどれか。

  1. 血管を収縮させて出血を防ぐ。
  2. 皮膚や筋肉を弛緩させる。
  3. 鍼の刺入を予告する。
  4. 刺激に慣れさせる。

第10回-144

前揉法の目的で適切でないのはどれか。

  1. 精神的緊張をとる。
  2. 筋肉を弛緩させる。
  3. 刺鍼を予告する。
  4. 出血を防止する。

第29回-162

押手について正しいのはどれか。

  1. 母指と示指が鍼体をつまむ圧を固定圧という。
  2. 刺入速度を調節する。
  3. 周囲圧に相当するのは水平圧である。
  4. 皮膚の緊張度を調節する。

第5回-141

押手の圧で母指と示指が鍼体をつまむ圧はどれか。

  1. 垂直圧
  2. 固定圧
  3. 持続圧
  4. 水平圧

第10回-141

押し手の圧で周囲圧に相当するのはどれか。

  1. 水平圧
  2. 固定圧
  3. 垂直圧
  4. 持続圧

第23回-142

押手の周囲圧の目的はどれか。

  1. 押手がずれないようにする。
  2. 鍼体を保持する。
  3. 刺鍼部の皮膚を圧迫する。
  4. 筋肉の緊張状態をはかる。

第7回-145

押手について誤っているのはどれか。

  1. 鍼体を保持する。
  2. 刺入速度を調節する。
  3. 刺鍼部を固定する。
  4. 皮膚の緊張度を調節する。

第20回-144

刺鍼の術式に関する説明で正しい記述はどれか。

  1. 前揉法は鍼の遺感覚を除くために行う。
  2. 撚鍼法は鍼を左右に半回転ずつ交互にひねり刺入する。
  3. 管鍼法では弾入行為が切皮である。
  4. 押手の固定圧が弱いと鍼は倒れてしまう。

第12回-142

撚鍼法の術式で必要ないのはどれか。

  1. 前揉法
  2. 消毒
  3. 挿管
  4. 切皮

🌟基本的な刺鍼方法~基本17手技~

鍼灸施術における刺激の加え方は多種多様であり、目的や症状、患者の体質に応じて使い分ける必要があります。

「基本17手技」は、そのバリエーションを整理した国家試験頻出の知識であり、それぞれが刺激量・方向・リズムに応じた明確な目的をもって設計されています。

以下では、17の手技を体系的に分類し、ポイントを押さえて覚えられるよう構成しています。

基本17手技一覧とポイント

  • 単刺術:刺してすぐに抜く、最も基本的な手技
  • 置鍼術:刺入した鍼を一定時間そのまま留めておく。刺激量は滞留時間で調整
  • 雀啄術(じゃくたくじゅつ):鍼を上下に反復動作させて刺激を与える。雀がついばむような動作
  • 間歇術(かんけつじゅつ):目的の深さに刺した後、半分抜き、再度刺入を繰り返す
  • 屋漏術(おくろうじゅつ):深度を3等分し、各層で雀啄を行う応用技
  • 旋撚術(せんねんじゅつ):左右交互に回転(撚鍼)させる操作
  • 回旋術(かいせんじゅつ):一方向に継続的に回す。抜鍼困難を起こしやすい点に注意
  • 乱鍼術:さまざまな刺激手技を組み合わせて施術する応用操作
  • 髄鍼術(ずいしんじゅつ):呼気で刺入・吸気で停止など、呼吸に連動して操作
  • 内調術:刺入後の鍼柄または鍼体を鍼管で軽く叩いて振動を加える
  • 副刺激術:刺入中の鍼周囲を鍼管や指で叩くことで追加刺激を与える(弾入でない
  • 指示打法:刺入した鍼に鍼管を被せて叩く。不抜鍼や渋鍼の対処法として重要
  • 細指術(さいしじゅつ):鍼を刺さず体表を繰り返し弾入刺激する。折鍼のリスクが少ない
  • 管散術(かんさんじゅつ):鍼を使用せず弱い刺激を与える。刺入しない・非侵害性が特徴
  • 鍼尖転移法:刺入した鍼を皮下に留め、皮膚をりん状に動かして刺激
  • 刺鍼転向法:刺入後に鍼の角度を変更して刺激の方向を変える

🔑 国家試験対策まとめ

・回旋術=一方向回転 → 抜鍼困難に注意

・髄鍼術=呼吸に合わせて操作

・指示打法=不抜鍼の対処法として重要

・管散術=非刺入・非侵害性の刺激

これらの手技はすべて、臨床での「刺激量の調整」「痛みの軽減」「効果の最大化」に密接に関わっています。

国家試験では、名称・特徴・使い方が問われやすいため、語呂合わせや分類で整理して暗記すると効果的です。

また、「○○術はどのような操作か」「目的深度で上下に動かす手技は?」といった出題形式が多いため、動作のイメージと用語をリンクさせておくことが得点アップにつながります。

第20回-147

刺激量を鍼の上下動で調整する手技はどれか。

  1. 雀啄術
  2. 旋撚術
  3. 鍼尖転移術
  4. 副刺激術

第3回-143

次の文で示す刺鍼中の手技はどれか。 「鍼が目的の深さに達したら、半分抜いてしばらくそこにとどめ、また前の深さまで刺入して、しばらくそこにとどめることを繰り返す。」

  1. 屋漏術
  2. 乱鍼術
  3. 鍼転向法
  4. 間歇術

第26回-141

次の文で示す刺鍼操作はどれを応用したものか。 「筋内での置鍼中に強い響き感覚と鈍痛を生じたので、その位置より少しだけ鍼を引き上げ、しばらく留置してから再び筋中まで刺入した後抜鍼したところ、鈍痛を軽減させることができた。」

  1. 随鍼術
  2. 内調術
  3. 屋漏術
  4. 間歇術

第8回-144

雀啄を用いる手技はどれか。

  1. 間歇術
  2. 回旋術
  3. 内調術
  4. 屋漏術

第22回-142

刺入した鍼の深度を変化させる術式はどれか。

  1. 内調術
  2. 示指打法
  3. 振せん術
  4. 屋漏術

第24回-142

刺鍼手技で目的深度までを3等分し、各深度で雀啄を行うのはどれか。

  1. 間歇術
  2. 屋漏術
  3. 乱鍼術
  4. 随鍼術

第13回-141

鍼の刺激量を刺入の継続時間で調節するのはどれか。

  1. 雀啄術
  2. 旋撚術
  3. 単刺術
  4. 置鍼術

第5回-142

次の文で示す刺法はどれか。 「刺入時および抜鍼時に鍼を半回転ずつ交互に回しながら行う。」

  1. 旋撚術
  2. 回旋術
  3. 屋漏術
  4. 間歇術

第16回-141

刺入時および抜鍼時に鍼を半回転ずつ交互に回しながら行う手技はどれか。

  1. 内調術
  2. 屋漏術
  3. 旋撚術
  4. 間歇術

第25回-142

鍼の術式で刺鍼時・抜鍼時に左右交互にひねりながら行うのはどれか。

  1. 旋撚術
  2. 乱鍼術
  3. 回旋術
  4. 間歇術

第1回-142

鍼を目的の深度まで刺入して右または左の一方向に回す手技はどれか。

  1. 回旋術
  2. 刺鍼転向術
  3. 旋撚術
  4. 鍼尖転移術

第7回-144

抜鍼困難を起こしやすい刺法はどれか。

  1. 置鍼術
  2. 副刺激術
  3. 回旋術
  4. 示指打法

第11回-142

一定の刺入深度に達した後、鍼の上下動で刺激を与える手技でないのはどれか。

  1. 回旋術
  2. 雀啄術
  3. 間歇術
  4. 屋漏術

第28回-142

現行17手技で鍼を一方向に回すのはどれか。

  1. 旋撚術
  2. 回旋術
  3. 細指術
  4. 間歇術

第2回-142

刺入した鍼の周囲の皮膚を鍼管または指頭で叩き、刺激を与える手技はどれか。

  1. 示指打法
  2. 内調術
  3. 細指術
  4. 副刺激術

第10回-142

弾入動作を用いて刺激を与える手技でないのはどれか。

  1. 管散術
  2. 副刺激術
  3. 示指打法
  4. 細指術

第5回-143

渋鍼の対処法で不抜鍼に行う刺法はどれか。

  1. 乱鍼術
  2. 刺鍼転向法
  3. 示指打法
  4. 鍼尖転移法

第19回-142

一定の深さに刺入した鍼に鍼管をかぶせて行う手技はどれか。

  1. 示指打法
  2. 副刺激術
  3. 管散術
  4. 内調術

第7回-143

呼気に刺入し、吸気で止めるのはどれか。

  1. 振せん術
  2. 内調術
  3. 随鍼術
  4. 屋漏術

第14回-147

患者の呼吸に合わせて運鍼を行うのはどれか。

  1. 随鍼術
  2. 間歇術
  3. 内調術
  4. 副刺激術

第27回-142

刺鍼手技で呼気時に刺入し吸気時に止めるを繰り返し、目的深度まで刺入するのはどれか。

  1. 乱鍼術
  2. 随鍼術
  3. 内調術
  4. 間歇術

第1回-146

正しい組合せはどれか。

  1. 十二節に応ずる刺法 ─── 遠道刺
  2. 九変に応ずる刺法 ──── 直鍼刺
  3. 五臓に応ずる刺法 ──── 短刺
  4. 杉山流管鍼法 ────── 随鍼術

第15回-142

随鍼術で鍼を抜き上げる時に適切でない状態はどれか。

  1. 肋骨挙筋収縮
  2. 横隔膜収縮
  3. 内肋間筋収縮
  4. 外肋間筋収縮

第6回-141

次の文で示す刺法はどれか。 「刺入した鍼の鍼柄又は鍼体を鍼管で叩打し振動を与える。」

  1. 管散術
  2. 細刺術
  3. 内調術
  4. 振せん術

第20回-143

内調術の説明で正しいのはどれか。

  1. 刺入した鍼の鍼柄を鍼管で叩く。
  2. 鍼管の上端を叩くだけで鍼を使用しない。
  3. 刺入した鍼に再び鍼管をかぶせ鍼管の上端を叩く。
  4. 刺入した鍼の周囲の皮膚を鍼管で叩く。

第4回-141

次の文で示す刺法はどれか。 「目的とする経穴を中心に弾入のみを繰り返す。」

  1. 細指術
  2. 示指打法
  3. 内調術
  4. 管散術

第9回-143

弾入を繰り返すのはどれか。

  1. 随鍼術
  2. 細指術
  3. 間歇術
  4. 屋漏術

第12回-144

体動による折鍼の危険性が少ないのはどれか。

  1. 間歇術
  2. 細指術
  3. 屋漏術
  4. 回旋術

第17回-144

体表を繰り返し刺激する手技はどれか。

  1. 回旋術
  2. 屋漏術
  3. 単刺術
  4. 細指術

第20回-142

弾入だけを繰り返す刺法はどれか。

  1. 屋漏術
  2. 細指術
  3. 雀啄術
  4. 間歇術

第3回-147

鍼を使用しない手技はどれか。

  1. 細指術
  2. 管散術
  3. 単刺術
  4. 内調術

第6回-142

皮下に刺入しない手技はどれか。

  1. 回旋術
  2. 示指打法
  3. 雀啄術
  4. 管散術

第8回-145

最も弱い刺激となる手技はどれか。

  1. 旋撚術
  2. 管散術
  3. 乱鍼術
  4. 振せん術

第9回-142

切皮後に鍼管を用いて刺激を与える方法でないのはどれか。

  1. 内調術
  2. 管散術
  3. 示指打法
  4. 副刺激術

第11回-143

侵害受容器を興奮させない手技はどれか。

  1. 振せん術
  2. 単刺術
  3. 随鍼術
  4. 管散術

第14回-145

施術により生じた神経インパルスの伝導に主としてAβ線維が関与するのはどれか。

  1. 置鍼術
  2. 間歇術
  3. 管散術
  4. 屋漏術

第15回-141

鍼刺激に対して過敏な患者への施術で最も適切なのはどれか。

  1. 細指術
  2. 管散術
  3. 間歇術
  4. 内調術

第18回-142

鍼を使用せず弱刺激を与える手技はどれか。

  1. 内調術
  2. 単刺術
  3. 細指術
  4. 管散術

第25回-143

鍼の術式のうち鍼管のみを用い、弾入の要領で鍼管を叩打するのはどれか。

  1. 細指術
  2. 内調術
  3. 振せん術
  4. 管散術

第16回-142

主に皮下組織に刺激を与える手技はどれか。

  1. 間歇術
  2. 内調術
  3. 屋漏術
  4. 鍼尖転移法

第21回-142

鍼を皮下に留め、押手と刺手と共に皮膚を輪状に動かす手技はどれか。

  1. 施撚術
  2. 回旋術
  3. 刺鍼転向術
  4. 鍼尖転移術

第23回-143

刺入した鍼の角度を変える手技はどれか。

  1. 副刺激術
  2. 乱鍼術
  3. 刺鍼転向術
  4. 鍼尖転移術

第12回-141

刺激方法として鍼管を用いないのはどれか。

  1. 示指打法
  2. 管散術
  3. 副刺激術
  4. 刺鍼転向法

第8回-142

最も古くからある鍼法はどれか。

  1. 撚鍼法
  2. 打鍼法
  3. 皮内鍼法
  4. 管鍼法

第17回-141

最も古い刺鍼法はどれか。

  1. 打鍼法
  2. 皮内鍼法
  3. 撚鍼法
  4. 管鍼法

第20回-141

古代中国から伝来した鍼法はどれか。

  1. 打鍼法
  2. 管鍼法
  3. 皮内鍼法
  4. 撚鍼法

第7回-142

細指術と管散術とに共通するのはどれか。

  1. 鍼管を使用する。
  2. 鍼を皮下に刺入する。
  3. 刺抜を繰り返す。
  4. 鍼に振動を与える。

第29回-163

雀啄術と回旋術に共通するのはどれか。

  1. 抜鍼困難時に使用する。
  2. 鍼柄を刺手でつまみ振動を与える。
  3. 一定深度に刺入後、鍼を動かし刺激を与える。
  4. 刺入した後、鍼管で刺激を与える。

第16回-143

刺鍼法と手技との組合せで誤っているのはどれか。

  1. 管鍼法 ―――― 示指打法
  2. 小児鍼法 ─── 接触鍼
  3. 打鍼法 ―――― 勝曳の鍼
  4. 撚鍼法 ―――― 細指術

第12回-143

管鍼術の創始者はどれか。

  1. 石坂宗哲
  2. 杉山和一
  3. 菅沼周桂
  4. 御園意斎

🌟特殊鍼法

鍼灸には、いわゆる「刺す鍼」だけでなく、皮膚に刺入せずに刺激を加える方法や、非常に浅く・長時間留置する方法もあります。

これらは特殊鍼法と呼ばれ、特に小児、高齢者、虚弱体質の患者など、刺激に敏感な方への施術で重宝されています。

小児鍼

  • 摩擦鍼:皮膚表面をこすって刺激する手技
    • ウサギ鍼:先端が平らで柔らかい。皮膚をなでるように用いる
    • ローラー鍼:ローラーを転がすことで面で刺激する
  • 接触鍼:鍼先を皮膚に触れさせるだけの微刺激
    • 振子鍼:先端が揺れるように設計されており、軽微な振動を伝える
  • いちょう鍼:摩擦鍼と接触鍼の中間的な刺激を与える

小児鍼は、文字通り子ども向けに開発された鍼法であり、主に夜泣き・疳の虫・便秘・虚弱体質などに効果があるとされています。

対象年齢は乳幼児〜小学校低学年が中心で、痛みや恐怖心を与えないことが最も重視されます。

国家試験では、「小児鍼に用いられる接触鍼の名称は?」「摩擦鍼の種類は?」といった問題が出題されやすいため、ウサギ鍼=摩擦、振子鍼=接触、いちょう鍼=中間という分類で記憶しましょう。

皮内鍼・円皮鍼

  • 皮内鍼(ひないしん)
    • 赤羽幸兵衛が考案
    • 極細の鍼を皮膚に水平に刺入し、数日間留置する
    • 主に肩こり、腰痛、顎関節症、耳鳴りなどに使われる
  • 円皮鍼(えんぴしん)
    • 絆創膏に極短い鍼が垂直に取り付けられた構造
    • 皮膚に垂直に刺入して貼り付け、持続的な刺激を与える
    • セルフケアや耳ツボ刺激にも活用される

皮内鍼・円皮鍼は、持続的な軽刺激を目的とした鍼法です。

一般の毫鍼と違って即効性よりも、数時間〜数日間かけて穏やかに刺激を与える点が特徴です。

臨床では患者自身による貼付も可能なため、セルフケアや在宅施術でも活用されています。

🔑 国家試験対策まとめ

・小児鍼は刺さない鍼:摩擦・接触・いちょう鍼など

・皮内鍼は水平刺入/考案者:赤羽幸兵衛

・円皮鍼は垂直刺入/セルフケアにも使用可

これらの特殊鍼法は、現代の医療・介護・福祉現場でも非常に応用範囲が広く、非侵襲性・長時間刺激・患者負担の軽減という観点からも注目されています。

国家試験だけでなく、卒後臨床においても習得しておきたい技術です。

第2回-149

低周波鍼通電療法で通常、電極として用いる鍼はどれか。

  1. 銀鍼
  2. 絶縁鍼
  3. 金鍼
  4. ステンレス鍼

第5回-145

低周波鍼通電療法について誤っている記述はどれか。

  1. 自律神経機能を調整する。
  2. 痛みを抑制する。
  3. 脳脊髄圧を上昇させる。
  4. 異常知覚を改善する。

第7回-141

小児鍼に相当する古代九鍼はどれか。

  1. 毫鍼
  2. 鋒鍼
  3. 円鍼
  4. 員利鍼

第15回-143

運動中も継続して刺激ができるのはどれか。

  1. 灸頭鍼
  2. 円皮鍼
  3. ローラー鍼
  4. 鍉鍼

第18回-141

鍼の手技で最も新しいのはどれか。

  1. 皮内鍼法
  2. 管鍼法
  3. 打鍼法
  4. 撚鍼法

第10回-145

刺激時間が最も長い鍼法はどれか。

  1. 鍼通電法
  2. 皮内鍼法
  3. 散鍼法
  4. 小児鍼法

第21回-143

刺激時間を最も長くできるのはどれか。

  1. 小児鍼法
  2. 皮内鍼法
  3. 灸頭鍼法
  4. 鍼通電療法

第22回-144

特殊鍼法で水平刺するのはどれか。

  1. 小児鍼法
  2. 灸頭鍼法
  3. 皮内鍼法
  4. 散鍼法

第29回-164

特殊鍼法で水平に刺入するのはどれか。

  1. 灸頭鍼
  2. 集毛鍼
  3. 円皮鍼
  4. 皮内鍼

第18回-143

筋など深部まで刺入を必要とする鍼法はどれか。

  1. 皮内鍼法
  2. 灸頭鍼法
  3. 散鍼法
  4. 小児鍼法

第23回-144

機械刺激と温熱刺激を同時に与えることができるのはどれか。

  1. 皮内鍼法
  2. 吸角療法
  3. 鍼通電療法
  4. 灸頭鍼法

第31回-163

機械刺激と温熱刺激を同時に与える特殊鍼法はどれか。

  1. 皮内鍼法
  2. 灸頭鍼法
  3. 小児鍼法
  4. 鍼通電療法

第19回-143

小児鍼のうち接触鍼と摩擦鍼の両刺激を与えるのに最も適した鍼はどれか。

  1. ウサギ鍼
  2. 集毛鍼
  3. 振子鍼
  4. いちょう鍼

第25回-144

現在の小児鍼で接触鍼および摩擦鍼として用いるのはどれか。

  1. ウサギ鍼
  2. いちょう鍼
  3. 振子鍼
  4. ローラー鍼

第13回-142

小児鍼として使用しないのはどれか。

  1. 鍉鍼
  2. 車鍼
  3. 鋒鍼
  4. いちょう鍼

第20回-145

耳鍼療法で使用しないのはどれか。

  1. 皮内鍼
  2. 鋒鍼
  3. 円皮鍼
  4. 毫鍼

🌟臨床応用

鍼灸治療における刺鍼技術は、患者の状態や症状、目的によって多様に応用されます。

刺入深度、刺激量、手技の組み合わせを調整することで、痛みの軽減・自律神経の調整・筋緊張の緩和・免疫機能の活性化など、幅広い効果が期待されます。

臨床での刺鍼の目的と効果

  • 疼痛緩和:侵害受容抑制、内因性オピオイドの放出
  • 血流改善:局所循環の促進、冷えの改善
  • 筋緊張の調整:トリガーポイントへの刺鍼、筋スパズムの解除
  • 自律神経調整:交感神経優位の改善、睡眠障害への応用
  • 免疫活性:白血球数・ナチュラルキラー細胞の増加が報告

これらの臨床効果は、東洋医学的な弁証論治に加えて、現代医学的メカニズムとも整合性があることが研究により明らかにされています。

刺激量の調整と手技の選択

患者の体質や病態に合わせた刺激量の調整は、臨床において最も重要な要素の一つです。

例えば、虚証の高齢者には軽刺激・浅刺・短時間の置鍼が適しており、実証で頑固な肩こりには深刺・雀啄術・旋撚術などが有効です。

症例別:刺激量の調整例

  • 高齢者の夜間頻尿:太谿・陰交に浅刺+置鍼術
  • 自律神経失調症:神門・内関に管鍼法+軽い雀啄
  • 肩こり・頭痛:肩井・天柱に深刺+旋撚術

刺鍼の安全管理と禁忌

臨床で刺鍼を行う際には、事故防止・感染予防・禁忌部位の理解が不可欠です。

特に重要な禁忌事項として、以下のようなものが挙げられます:

  • 刺鍼禁忌部位:乳頭、臍、外陰部、心臓直上(心窩部)
  • 出血傾向のある疾患や抗凝固薬内服者には注意
  • 妊婦への腹部・腰部刺鍼は原則避ける

また、刺入後の抜鍼忘れ、過度な刺激による折鍼や気胸といった医療事故も報告されており、押手・刺手の正しい操作、患者の体動予測、記録管理も大切です。

国家試験でよく問われる臨床応用ポイント

🔑 頻出ポイント

・自律神経調整の経穴:神門、内関、百会

・刺鍼禁忌部位:乳頭・臍・外陰部・妊婦の腹腰部など

・刺激量の調整方法:手技(雀啄・旋撚など)と留置時間

これらは臨床だけでなく、国家試験でも問われやすいため、疾患と適応経穴・手技の組み合わせをセットで理解・記憶することが重要です。

今後の実技試験・現場臨床においても、自信をもって刺鍼が行えるよう、日々の実習・ケーススタディで臨床応用の感覚を磨いておきましょう。

第1回-147

WHOでは鍼治療の適応といえる疾患として41疾患をあげているが、そのなかに含まれないのはどれか。

  1. 血友病
  2. メニエール病
  3. 頸腕症侯群
  4. 胃酸過多症

第12回-145

WHOの「鍼の基礎教育と安全性に関するガイドライン(1999年)」で鍼治療を避けるべき状態としているのはどれか。

  1. つわり
  2. 手術後の嘔吐
  3. 歯科の術後痛
  4. 出血性の疾患

第23回-145

鍼治療の絶対禁忌はどれか。

  1. 血友病
  2. 三叉神経痛
  3. 慢性胃炎
  4. 慢性閉塞性肺疾患

第16回-145

鍼通電療法が禁忌となるのはどれか。

  1. 心臓ペースメーカー
  2. 尿路ストーマ(人工膀胱)
  3. インプラント
  4. 人工関節

第24回-143

WHOの「鍼の基礎教育と安全性に関するガイドライン(1999年)」において、鍼通電療法を行ってはならないのはどれか。

  • ペースメーカーを使用している者
  • 人工関節を使用している者
  • インプラントを使用している者
  • ステントを使用している者

第19回-144

鍼の刺激に関する記述で正しいのはどれか。

  • 同じ刺入深度では素早い刺入より遅い刺入の刺激が弱い。
  • 同じ刺入深度では細い鍼より太い鍼の刺激が弱い。
  • 同じ太さの鍼では浅い刺入より深い刺入の刺激が弱い。
  • 同じ振幅では短時間雀啄より長時間雀啄の刺激が弱い。

第21回-144

同じ鍼刺激に対してより鋭敏なのはどれか。

  1. 鍼治療の未経験者より経験者
  2. 体質の虚弱な者より頑健な者
  3. 青年より小児
  4. 手足より背部

第29回-165

鍼施術に対する患者の感受性を決定する要因はどれか。

  1. 鍼体の太さ
  2. 刺鍼の手技
  3. 受療経験の有無
  4. 刺激時間の長さ

第25回-145

NIHの合意形成声明書(1998年2月最終版)で、鍼が有効とされるのはどれか。

  1. 薬物中毒
  2. テニス肘
  3. 月経痛
  4. 妊娠時の吐き気

第27回-143

理学検査が陽性の病態に局所刺鍼が最も有効なのはどれか。

  • チェアテスト
  • アプリヘンジョンテスト
  • ストロークテスト
  • ラックマンテスト

🌟リスク管理

鍼灸治療は基本的に安全性の高い施術ですが、適切な手技・衛生管理・リスク認識がなければ、患者の身体に深刻な影響を及ぼす可能性もあります。

国家試験でも鍼施術に伴うリスクとその対処法は頻出テーマとなっており、臨床現場でも重要な知識です。

刺鍼時に注意すべき主なリスクと対処法

主なリスクと対策一覧

  • 抜鍼困難:副刺激術、支持打法、迎え鍼を用いる
  • 脳貧血(血の気が引く、気分不快):返し鍼、臥位での安静、少しずつ抜鍼
  • 折鍼:無理な圧迫・刺入・方向転換を避ける
  • 気胸:肩背部や胸部への深刺を避ける、適切な深度管理
  • 内出血・血腫:毛細血管損傷による、軽圧迫で止血

抜鍼困難とその対処法

抜鍼困難は、鍼の過度な回旋・刺入によって皮下組織が鍼に巻き込まれたり、筋肉が痙攣を起こして鍼がロックされる現象です。

無理に抜こうとすると折鍼のリスクがあるため、以下の対処法を習得しておく必要があります。

  • 副刺激術:鍼体周囲を軽く叩き、筋の緊張を緩める
  • 支持打法:鍼管をかぶせて鍼頭を軽く叩き、刺入の緊張を解除
  • 迎え鍼:少し鍼を刺入方向へ戻してから、ゆっくり抜鍼

これらは国家試験にも頻出であり、刺鍼手技の臨床応用・応急対応としても重視されます。

脳貧血(気分不快)への対応

刺鍼後や置鍼中に起こる脳貧血・気分不快・冷汗・顔面蒼白などの反応は、特に初回施術・過度な緊張・空腹時に起こりやすくなります。

  • 返し鍼:一気に鍼を抜かず、少しずつ段階的に抜鍼する
  • 施術姿勢を臥位または座位に変更する
  • 水分を取らせて安静にする
  • 冷房・室温などの環境整備

刺鍼前には患者の状態確認(睡眠・食事・緊張度)も怠らず、体調チェックと施術前の説明が事故予防につながります。

国家試験に出やすいリスク管理の項目

🔑 試験で問われやすいポイント

・刺鍼部の禁忌:乳頭・臍・外陰部・心臓上部など

・抜鍼困難時の対処:副刺激術・迎え鍼・支持打法

・脳貧血時の対応:返し鍼・臥位・安静

・折鍼の予防:無理な回旋・圧迫・筋緊張の観察

刺鍼技術は、技術的習熟だけでなく安全管理・倫理観・危険回避まで含めて完成されるものです。

国家試験では「対処法の正誤」や「禁忌部位の選択」が出題されやすく、実技でも患者の安全を守れる知識が求められます。

患者の信頼を得るためにも、リスクを予測し、正しく対応できる施術者を目指しましょう。

第1回-144

刺鍼による脳貧血の発生が少ない場合はどれか。

  1. 睡眠不足
  2. 刺激量の過剰
  3. 頸部、肩甲上部への刺激
  4. 腰部への刺激

第2回-143

抜鍼が困難な鍼(渋鍼)の周囲に刺鍼して筋肉を弛緩させてから抜鍼する処置法はどれか。

  1. 迎え鍼
  2. 散鍼
  3. 通し鍼
  4. 返し鍼

第3回-145

刺鍼による脳貧血の際に行うのはどれか。

  1. 渋り鍼
  2. 置き鍼
  3. 迎え鍼
  4. 返し鍼

第7回-146

返し鍼を行う場合はどれか。

  1. 脳貧血
  2. 折鍼
  3. 気胸
  4. 抜鍼困難

第8回-146

鍼の過誤について誤っている記述はどれか。

  1. 抜鍼困難な時は回旋術を行う。
  2. 折鍼した時は静かに皮膚を押し下げて折片を探す。
  3. 刺鍼後に残る違和感を予防するために後揉法を丁寧に行う。
  4. 感染防止にはディスポーザブル鍼を使用する。

第9回-145

鍼の副作用と対策との組合せで誤っているのはどれか。

  1. 刺鍼後の違和感 ─── 後揉法
  2. 脳貧血 ─────── 返し鍼
  3. 内出血 ─────── 迎え鍼
  4. 抜鍼困難 ────── 示指打法

第9回-146

ディスポーザブル鍼の滅菌に用いられるのはどれか。

  1. エチレンオキサイド
  2. グルタールアルデヒド
  3. ホルマリン
  4. エタノール

第11回-144

抜鍼困難時に使用しない手技はどれか。

  1. 鍼尖転移法
  2. 置鍼術
  3. 副刺激術
  4. 示指打法

第11回-145

折鍼事故の予防対策として適切でないのはどれか。

  1. オートクレーブ滅菌による反復使用を避ける。
  2. 鍼通電治療に交流電流を用いる。
  3. 曲がった鍼は伸ばして使う。
  4. 刺鍼中は動かないよう患者に指示する。

第12回-146

鍼治療の偶発症として起こり得るのはどれか。

  1. 抑うつ
  2. せん妄
  3. アフタ性潰瘍
  4. 神経障害

第13回-143

刺鍼による気胸としてみられないのはどれか。

  1. 呼吸困難
  2. 冷汗
  3. 胸痛
  4. 血痰

第13回-144

返し鍼の処置が適切なのはどれか。

  1. 脳貧血による一過性の失神
  2. 精神緊張による過換気
  3. 食中毒による下痢
  4. 刺鍼による発熱

第13回-145

ディスポーザブル鍼の取扱いとして適切でないのはどれか。

  1. 使用直前にパッケージを開く。
  2. 再生して使用する。
  3. 使用後は医療廃棄物として処理する。
  4. 滅菌の有効期限内に使用する。

第14回-141

単回(1回)使用毫鍼の品質を保証する方法として適切でないのはどれか。

  1. 引張り強度試験の実施
  2. ステンレス鋼線の使用
  3. 滅菌年月の表示
  4. 伝導性検査の実施

第14回-142

膝関節腔内へ鍼が刺入された場合に生じる可能性のあるのはどれか。

  1. 膝蓋軟骨軟化症
  2. 離断性骨軟骨炎
  3. 化膿性膝関節炎
  4. 膝窩嚢胞

第14回-143

低頻度鍼通電について適切でない記述はどれか。

  1. 折鍼を予防するために直流電流を用いる。
  2. 鎮痛は持続性がある。
  3. 臨床では鎮痛を目的として1~10Hzの周波数が多用される。
  4. 陰極側の閾値は陽極側よりも低い。

第14回-148

施術中の有害事象と処置との組合せで適切でないのはどれか。

  1. 内出血 ──── 圧迫
  2. 抜鍼困難 ─── 示指打法
  3. 気胸 ───── 返し鍼
  4. 遺感覚 ──── 後揉捏

第15回-145

抜鍼困難時に応用する手技はどれか。

  1. 示指打法
  2. 屋漏術
  3. 乱鍼術
  4. 鍼尖転移法

第15回-146

鍼治療の標準予防策として適切でないのはどれか。

  1. 血液は高リスクとして扱う。
  2. 指サックを着用する。
  3. 「一処置一手洗い」を実行する。
  4. 使用した鍼を鍼管に戻す。

第16回-144

灸頭鍼による熱傷予防対策で適切でない記述はどれか。

  • 着火時は炎が鍼体に当たらないように行う。
  • 水で濡らした綿花で放射(輻射)熱を遮断する。
  • 燃えている艾球の除去にアルコール綿花を用いる。
  • 施灸中は患者の体動を防ぐ。

第16回-147

体幹部に置鍼した鍼のうえにタオルをかけたことで発生しやすい有害事象はどれか。

  1. 疲労感
  2. 気胸
  3. 脳虚血
  4. 化膿

第16回-148

鍼施術のリスク管理として適切でない記述はどれか。

  1. 鍼は医療廃棄物として処理する。
  2. 滅菌バッグからシャーレを取り出して開放棚に保管する。
  3. 単回使用毫鍼を用いる。
  4. B型肝炎の予防接種を受ける。

第16回-146

鍼治療のうち禁止されているのはどれか。

  1. 皮内鍼
  2. レーザー鍼
  3. 埋没鍼
  4. イオン鍼

第17回-145

鍼の抜き忘れの防止策として適切でない記述はどれか。

  1. 置鍼した鍼の本数を確認し記載する。
  2. 単回使用毫鍼の使用時は、鍼管と抜鍼した鍼が同数であることを確認する。
  3. 鍼は刺入した者が抜く。
  4. 抜き忘れの最終確認は患者自身に委ねる。

第17回-146

抜鍼困難時に用いる処置で適切でないのはどれか。

  1. 迎え鍼
  2. 副刺激術
  3. 示指打法
  4. 返し鍼

第17回-147

消毒のレベルと実例との組合せで適切でないのはどれか。

  1. 消毒 ─── 円皮鍼
  2. 消毒 ─── 施術者の手指
  3. 滅菌 ─── 毫鍼
  4. 洗浄 ─── 胸枕

第18回-145

鍼治療後の気胸を疑う症状はどれか。

  1. 発熱
  2. 咳嗽
  3. 眩暈
  4. 悪寒

第18回-146

深刺による臓器傷害について誤っている組合せはどれか。

  1. 膏肓 ──── 肺
  2. 志室 ──── 腎臓
  3. 右梁門 ─── 肝臓
  4. 右陰都 ─── 脾臓

第19回-145

低周波鍼通電療法において誤っている記述はどれか。

  1. 通電波形は矩形波と棘状波がある。
  2. 折鍼を予防するため直流電流を用いる
  3. 心臓を挟む形での電極配置を避ける。
  4. 電極としてステンレス鍼を用いる。

第19回-146

刺鍼による内出血が最も起こりにくいのはどれか。

  1. 血友病患者
  2. 胃癌患者
  3. 人工透析患者
  4. 再生不良性貧血患者

第20回-146

我が国の単回使用毫鍼について誤っている記述はどれか。

  1. ホルマリンガスが充填されている。
  2. 構造はJISで規定されている。
  3. 製造業者の表示が義務付けられている。
  4. 無菌性が保証されている。

第21回-145

膏肓穴に深刺した際の合併症で生じる可能性のある症状はどれか。

  1. 下痢
  2. 腹痛
  3. 空咳
  4. 発熱

第21回-146

鍼施術に関する消毒・滅菌の記述で正しいのはどれか。

  1. 単回使用毫鍼の滅菌にはEOGが用いられる。
  2. 梅花鍼は洗浄して使用する。
  3. イソプロピルアルコールはB型肝炎ウイルスに有効である。
  4. 施術野の消毒には90%エタノールが用いられる。

第22回-143

抜鍼困難時に用いるのはどれか。

  1. 鍼尖転移術
  2. 回旋術
  3. 随鍼術
  4. 副刺激術

第22回-145

刺鍼による気胸発生のリスクが最も低い経穴はどれか。

  1. 神堂
  2. 欠盆
  3. 胸郷
  4. 天宗

第22回-146

単回使用鍼の滅菌に用いられるのはどれか。

  1. 塩化ベンザルコニウム
  2. グルコン酸クロルヘキシジン
  3. 酸化エチレンガス
  4. ポビドンヨード

は第23回-146

有害事象と予防・処置の組合せで正しいのはどれか。

  1. 気胸 ―――――――― 丹念な揉捏
  2. 抜鍼困難 ―――――― 返し鍼
  3. 鍼の抜き忘れ ―――― 鍼管数と抜鍼数の照合
  4. 刺鍼後の違和感 ――― 副刺激術

第23回-147

鍼施術における感染症対策として最も有効なのはどれか。

  1. クリーン・ニードル・テクニック
  2. ベースン法
  3. エアータオル
  4. 逆性石けんを用いた手洗い

第24回-144

鍼治療後に起こった症状で気胸を疑うのはどれか。

  1. 血痰
  2. 喘鳴
  3. めまい
  4. 呼吸困難

第24回-145

B型肝炎患者の肩こりに対する鍼施術で正しいのはどれか。

  1. 施術者はワクチン接種が法的に義務づけられている。
  2. 鍼刺し事故の場合はすぐに酒精綿で圧迫する。
  3. 刺入した鍼はウイルス付着物として扱う。
  4. 抜鍼後、出血していなければ素手で後揉法を行ってもよい。

第25回-146

迎え鍼を行う有害事象はどれか。

  1. 渋鍼
  2. 折鍼
  3. 脳貧血
  4. 気胸

第25回-147

医療現場における肝炎・エイズの感染について正しいのはどれか。

  1. 1回誤刺に対する感染成立の確率はC型肝炎が最も高い。
  2. 注射針の誤刺による感染が最も多い。
  3. エイズは食事で感染する。
  4. A型肝炎は血液を介して感染する。

第27回-144

単回使用毫鍼の滅菌に用いられるのはどれか。

  1. ポビドンヨード
  2. イソプロピルアルコール
  3. 塩化ベンザルコニウム
  4. EOG

第28回-143

深刺により化膿性関節炎のリスクがある経穴はどれか。

  1. 欠盆
  2. 肩髎
  3. 天宗
  4. 膏肓

第28回-144

患者の体動により抜鍼困難が生じた場合の対応として適切でないのはどれか。

  1. 患者をリラックスさせる。
  2. 返し鍼を行う。
  3. 筋緊張が緩解するまで待つ。
  4. 副刺激術を行う。

第28回-145

毫鍼の製造工程で滅菌に用いるのはどれか。

  1. グルコン酸クロルヘキシジン
  2. 塩化ベンザルコニウム
  3. 酸化エチレンガス
  4. ポビドンヨード

第29回-161

我が国で製造されている単回使用毫鍼について誤っているのはどれか。

  1. 無菌性が保証されている。
  2. ホルマリンガスで滅菌されている。
  3. 製造業者の表示が義務付けられている。
  4. 管理医療機器に分類される。

第29回-166

鍼通電装置と近接使用してはならないのはどれか。

  1. 紫外線
  2. マイクロ波
  3. 超音波
  4. 赤外線

第29回-167

衛生的な鍼施術を行う場合、感染症対策として最も適切なのはどれか。

  1. クリーン・ニードル・テクニック
  2. 抜鍼後消毒綿花の一般廃棄物処理
  3. 逆性石けんを用いた手指洗浄
  4. エアータオルによる乾燥

第31回-164

クリーン・ニードル・テクニックの説明として最も適切なのはどれか。

  1. 手指を逆性石けんで入念に洗浄する。
  2. 刺鍼局所をアルコール綿で清拭消毒する。
  3. 鍼体に直接触れずに一連の刺鍼操作を行う。
  4. 使用後のアルコール綿を感染性廃棄物として取り扱う。

🌟鍼治効の基礎

末梢における鍼刺激の受容と伝導

鍼刺激は皮膚や筋のさまざまな受容器を興奮させ、その刺激は神経線維を介して中枢に伝わり、最終的に鎮痛や自律神経調整、血流改善などの治効効果を生み出します。

ここでは、末梢神経での刺激受容と伝導の仕組みを国家試験対策として整理しましょう。

鍼刺激と興奮する神経線維

  • 雀啄術(しゅくたくじゅつ)は侵害刺激となり、Aδ線維やC線維などの侵害受容線維が興奮
  • 軽擦・押圧などの触圧刺激は、Aβ線維(Ⅱ群線維)を興奮
  • 鍼の「ひびき(重だるさ)」はC線維(Ⅳ群)によるもの
  • 皮膚の切皮痛=Aδ線維(Ⅲ群)、鋭く一過性
  • 押手による皮膚刺激や刺入圧=Aβ線維(触圧覚)
線維群受容器神経線維
Ⅱ群筋紡錘・触圧受容器
Ⅲ群冷・温受容器・高閾値侵害受容器
Ⅳ群温・通受容器・ポリモーダル受容器C
感覚神経線維と受容器の対応

また、C線維が興奮するとプロスタグランジンなどの痛み増強物質が放出され、ポリモーダル受容器が感作されることもあります。

特徴高閾値侵害受容器ポリモーダル受容器
反応刺激機械的侵害刺激機械・熱・化学的刺激
伝導線維Aδ線維C線維
痛みの局在明瞭不明瞭
痛みの性質鋭く、早い鈍く、遅い
痛覚受容器の比較

国家試験では、以下のような問われ方をします:

例題
Q. 鍼刺激による「ひびき」の感覚を伝導するのはどの線維か?

→ 正解:Ⅳ群線維(C線維)

触圧覚受容器の種類と特徴

種類無毛部受容器有毛部受容器順応性
圧覚メルケル盤
ルフィニ終末
触覚版
ルフィニ終末
遅い
触覚マイスナー小体毛包受容器速い
振動覚パチニ小体パチニ小体最も速い
触圧受容器の分類と特徴

これら受容器のうち、特にマイスナー小体やパチニ小体は皮膚表層や深層に位置し、鍼灸の軽擦・押手・刺入操作などに反応するため、臨床でも重要な存在です。

末梢での鍼刺激の伝導は、このように神経線維の種類・受容器の違い・刺激強度と性質によって異なるため、基礎からしっかり理解しておくことが大切です。

第21回-147

鍼刺激によるポリモーダル受容器の興奮を伝える神経線維はどれか。

  1. Aβ
  2. Aα

第12回-147

鍉鍼による押圧刺激の情報を伝える神経線維はどれか。

  1. Aδ
  2. Aα
  3. Aβ

第18回-149

鍼刺激による反応でポリモーダル受容器が関与しないのはどれか。

  1. サブスタンスPの遊離
  2. Aβ線維の興奮
  3. 内因性鎮痛機構の賦括
  4. 鍼のひびきの惹起

第21回-148

管散術の刺激を伝える神経線維はどれか。

  1. Aδ
  2. Aγ
  3. Aβ
  4. Aα

第14回-145

施術により生じた神経インパルスの伝導に主としてAβ線維が関与するのはどれか。

  1. 置鍼術
  2. 屋漏術
  3. 管散術
  4. 間歇術

第26回-143

鍼施術の際にⅢ群線維が伝えるのはどれか。

  1. 重だるい響き感覚
  2. 鋭い切皮痛
  3. 鍼の刺入圧
  4. 押手の上下圧

第26回-144

小児鍼による触圧刺激に対して最も順応の早い受容器はどれか。

  1. 毛包受容器
  2. パチニ小体
  3. ルフィニ終末
  4. メルケル盤

第22回-147

鍼刺激とその反応との組合せで正しいのはどれか。

  • 管散術による刺激 ─────── Aδ線維の興奮
  • 雀啄術による響き ─────── B線維の興奮
  • 鍉鍼刺激 ──────── 高閾値機械受容器の興奮
  • いちょう鍼による擦過刺激 ─── ポリモーダル受容器の興奮

第23回-148

刺鍼した際の重だるいひびき感覚を伝える主な神経線維はどれか。

  1. Ⅳ群
  2. Ⅲ群
  3. Ⅰ群
  4. Ⅱ群

感覚の中枢伝導路

鍼刺激によって末梢で受容された感覚は、神経線維を通じて中枢神経系に伝えられ、脊髄→視床→大脳皮質へと到達します。

これにより、痛みや触圧感覚などが意識され、さらに治療効果としての痛み抑制や自律神経調整が発現します。

主要な感覚伝導路

  • 後索・内側毛帯路:触覚・圧覚・振動覚・深部感覚(位置覚・運動覚)
  • 脊髄視床路:痛覚・温度覚
  • 脊髄小脳路:無意識的な筋運動制御(主に小脳へ)
伝導路伝える感覚交叉終点
後索・内側毛帯路触覚・圧覚・振動覚・深部感覚延髄で交叉大脳皮質
外側脊髄視床路痛覚・温度覚脊髄で交叉視床→大脳皮質
前脊髄視床路粗大な触覚脊髄で交叉視床
後脊髄小脳路無意識的運動調節交叉しない小脳
感覚伝導路の比較

鍼灸治療に関係するのは主に「脊髄視床路(痛覚)」「後索・内側毛帯路(触覚・深部感覚)」です。特に、刺激が強い刺鍼手技(例:雀啄術)では、痛覚が脊髄視床路を介して脳に伝えられます。一方、皮膚に優しい接触鍼などでは触覚が後索を通ります。

国家試験での頻出ポイント

  • 痛覚・温度覚は脊髄視床路で脊髄レベルで交叉
  • 触覚・深部感覚は延髄で交叉して大脳へ
  • 感覚野は頭頂葉の中心後回(一次体性感覚野)

さらに、視床を経由した感覚は大脳皮質の一次体性感覚野(中心後回)に投射されて「痛み」や「ひびき」などとして認識されます。治療者にとっては、どの経路がどのような感覚を伝えているかを理解して手技を選ぶことが重要です。

例題
Q. 雀啄術で伝わる感覚の伝導路として正しいものはどれか?

→ 正解:外側脊髄視床路(痛覚・温度覚)

このように、感覚の伝導路を押さえておくことで、鍼灸刺激による患者の訴えを理解しやすくなります。

また、リスク管理(抜鍼困難・脳貧血)などの副反応に対しても、適切な反応や対処が可能になります。

第19回-147

鍼刺激による鈍い響き感覚を伝える脊髄内伝導路はどれか。

  • 後索路
  • 錐体路
  • 皮質脊髄路
  • 脊髄視床路

第4回-146

鍼麻酔の鎮痛機構に関与する主な部位はどれか。

  1. 赤核
  2. 歯状核
  3. 尾状核
  4. 中脳水道周囲灰白質

第28回-149

鍼鎮痛の発現に関与する部位はどれか。

  1. 中脳水道周囲灰白質
  2. 脊髄前角
  3. 歯状核
  4. 赤核

第16回-150

鍼鎮痛の発現に関与するβエンドルフィンを分泌する部位はどれか。

  1. 中心後回
  2. 下垂体
  3. 視床
  4. 脊髄後角

鍼刺激と反射

鍼刺激によって引き起こされる反射は、自律神経系や内臓機能、筋緊張の調整に関与します。

これは求心性刺激が中枢を介して遠隔部に反応を起こす現象であり、鍼灸の効果機序のひとつとされています。

鍼刺激と関係の深い反射

  • 体性-内臓反射:体表の刺激により内臓機能が変化
  • 体性-自律神経反射:皮膚刺激により交感・副交感神経活動が変化
  • 内臓-体性反射:内臓疾患が皮膚・筋の過敏として現れる(圧痛点など)
反射の種類刺激部位反応部位
体性-内臓反射皮膚・筋内臓(胃・腸など)
体性-自律神経反射皮膚・筋交感神経・副交感神経
内臓-体性反射内臓皮膚・筋(関連痛)
鍼刺激に関係する反射の分類

鍼治療では、筋緊張の緩和や内臓機能の改善にこの反射が関与していると考えられています。

例えば、背部兪穴への刺鍼で胃腸機能が改善されるのは、体性-内臓反射の一例です。

国家試験ポイント

  • 反射は求心性線維→中枢→遠心性線維で構成
  • 鍼刺激が自律神経を介して内臓機能に影響
  • 体性-内臓反射が出題されやすい

臨床では、圧痛点・過敏帯を用いた診断と治療がこの反射理論に基づいています。

筋肉のこわばりや冷え、便秘などに対しても、遠隔部の経穴を選ぶ理由がここにあります。

鍼鎮痛

鍼灸治療の中心的効果ともいえるのが鎮痛作用です。

これは神経学的・生理学的なメカニズムに裏打ちされており、以下のようなしくみで痛みを軽減します。

鍼鎮痛の主なメカニズム

  1. 末梢刺激による侵害受容抑制(局所レベル)
  2. 脊髄レベルでのゲートコントロール
  3. 視床・大脳での感覚統合・抑制
  4. 脳幹からの下行性抑制系の活性化(内因性オピオイド)

なかでも特に重要なのが「下行性抑制系の活性化」です。

鍼刺激によって脳幹(中脳・橋・延髄)にある中脳中心灰白質(PAG)延髄網様体が活性化され、エンドルフィン・エンケファリン・ダイノルフィンなどの内因性オピオイドが分泌されます。

内因性オピオイド主な作用分泌部位
エンドルフィンモルヒネ様作用中脳・下垂体
エンケファリン脊髄・視床での鎮痛延髄・脊髄
ダイノルフィン脊髄での痛覚抑制脊髄後角
内因性オピオイドの種類と役割

国家試験での要点

  • 内因性オピオイドの中で最も強力なのはβ-エンドルフィン
  • ゲートコントロール理論ではAβ線維がC線維の伝達を抑制
  • PAG(中脳中心灰白質)は下行性抑制の起点

臨床的にも、慢性疼痛(肩こり、腰痛、関節痛など)に対する鍼治療はこの鍼鎮痛メカニズムに基づいて実践されています。

患者が「スーッと楽になった」と感じるのは、この内因性鎮痛系の働きが大きいと考えられます。

第1回-145

発痛に関連しない物質はどれか。

  1. ブラディキニン
  2. ソマトスタチン
  3. セロトニン
  4. カリウムイオン

第2回-147

痛覚に関する組合せで正しいのはどれか。

  1. Aδ(デルタ)神経線維 ─── 鈍痛
  2. C神経線維 ───────── 刺痛
  3. ブラジキニン ──────── 発痛物質
  4. ヒスタミン ───────── 血管収縮

第3回-141

エンドルフィンの拮抗物質はどれか。

  1. アセチルコリン
  2. セロトニン
  3. ドーパミン
  4. ナロキソン

第5回-148

鎮痛に関与する内因性オピオイドはどれか。

  1. ヒスタミン
  2. エンケファリン
  3. ノルアドレナリン
  4. プロスタグランジン

第5回-149

内因性発痛物質でないのはどれか。

  1. サブスタンスP
  2. セロトニン
  3. ドパミン
  4. ブラジキニン

第8回-147

内因性オピオイドの効果を特異的に消失させる物質はどれか。

  1. ヒスタミン
  2. セロトニン
  3. ナロキソン
  4. ブラジキニン

第10回-149

鍼鎮痛に関与しないのはどれか。

  1. カルシトニン
  2. ポリモーダル受容器
  3. エンドルフィン
  4. オピエート受容体

第13回-148

内因性発痛物質でないのはどれか。

  1. エンケファリン
  2. 水素イオン
  3. セロトニン
  4. ヒスタミン

第11回-147

内因性発痛物質でないのはどれか。

  1. カリウムイオン
  2. ブラジキニン
  3. 水素イオン
  4. アセチルコリン

第14回-146

動物実験で鍼鎮痛の効果が得られにくいとき、あらかじめ投与することで効果発現を促す物質はどれか。

  1. ナロキソン
  2. ロイシン
  3. D-フェニルアラ二ン
  4. アルギニン

第17回-148

鍼治療による鎮痛発現に関与しないのはどれか。

  1. 患部の循環改善
  2. 内因性オピオイドの産生
  3. 脊髄膠様質細胞の興奮
  4. 脳内ドパミンの減少

第23回-150

鍼鎮痛の発現に関与する物質はどれか。

  1. セロトニン
  2. アセチルコリン
  3. メラトニン
  4. トロポミオシン

第26回-149

持続効果の長い鎮痛系の賦活を期待して鍼通電療法を行う場合、通電周波数として最も適しているのはどれか。

  1. 5Hz
  2. 50Hz
  3. 100Hz
  4. 20Hz

第10回-147

内因性オピオイドによる鎮痛効果の特徴で正しいのはどれか。

  1. 発痛物質の生成抑制
  2. ナロキソンによる効果の増強
  3. 脊髄後角での疼痛閾値の低下
  4. 下行性抑制系の賦活

第24回-147

下行性痛覚抑制系による鍼鎮痛の特徴について正しいのはどれか。

  1. 効果は刺激周囲に限られる。
  2. 大脳皮質感覚野で起こる。
  3. 発現までに時間がかかる。
  4. 刺激終了後すぐに消失する。

第25回-150

1Hzの鍼通電刺激で起こる鍼鎮痛の特徴について正しいのはどれか。

  1. 効果の出現部位は施術部位と同じデルマトーム領域に限られる。
  2. 鍼通電終了と同時に鎮痛効果は消失する。
  3. 筋収縮が得られる刺激強度の方が効果が高い。
  4. 主にⅡ群線維が関与する。

第11回-146

鎮痛機構における下行性抑制に関与しないのはどれか。

  1. セロトニン
  2. β-エンドルフィン
  3. ノルアドレナリン
  4. ナロキソン

第27回-148

下行性痛覚抑制系において、脊髄後角で痛覚を遮断する物質として最も適切なのはどれか。

  1. ロイコトリエン
  2. ドパミン
  3. ノルアドレナリン
  4. グルタミン酸

第31回-169

広汎性侵害抑制調節の特徴について正しいのはどれか。

  1. 下行性ニューロンが脊髄前角細胞を抑制する。
  2. 効果発現に時間がかかる。
  3. 全身性に効果が出現する。
  4. Ⅱ群線維の興奮で作動する。

第28回-150

鍼の末梢性鎮痛効果に最も関与するのはどれか。

  1. ムスカリン受容体
  2. アドレナリン受容体
  3. ヒスタミン受容体
  4. アデノシンA1受容体

第18回-147

鍼鎮痛機構に関与しないのはどれか。

  1. 脊髄膠様質
  2. 下行性抑制
  3. オピオイド物質
  4. ブラジキニン

軸索反射

軸索反射(axon reflex)とは、鍼刺激などの末梢神経刺激が中枢を介さずに周囲に反応を伝える仕組みです。

これは、知覚神経の軸索が分枝して逆行性に興奮を伝導し、神経終末から生理活性物質を放出するという特殊な反射です。

軸索反射のメカニズム

  1. 鍼刺激により侵害受容器(Aδ線維・C線維)が興奮
  2. 興奮が中枢方向(求心性)だけでなく、軸索の側枝を逆行性に伝導
  3. 神経終末から物質(SP、CGRP)が放出
  4. 血管拡張・血管透過性亢進・浮腫・紅斑を引き起こす
関与物質作用
サブスタンスP(SP)血管拡張、発痛物質、浮腫の原因
CGRP強力な血管拡張、炎症反応促進
軸索反射で放出される神経伝達物質

このような軸索反射の結果、刺鍼部に発赤(フレア)・浮腫・熱感が現れることがあり、これは鍼刺激の局所反応として正常な生理現象とされます。

臨床応用のポイント

  • 局所の発赤や温感は軸索反射により血流増加している証拠
  • フレア反応は軸索反射の目安になる
  • 慢性疼痛や血流障害への鍼治療に応用される

この反応は局所性の治療効果を評価する指標にもなり、フレア反応が見られると、鍼の刺激が神経系に適切に届いていることを示唆します。

特に、冷え症・末梢循環不全・筋緊張改善においては、軸索反射が鍼灸治療の有効性に関与していると考えられます。

ただし、炎症性疾患やアレルギー疾患、または交感神経過緊張状態では、軸索反射の過剰な活性が逆効果になる場合もあるため、刺鍼部位や刺激量には注意が必要です。

国家試験の重要点

  • 軸索反射は中枢を介さずに末梢神経内で完結
  • サブスタンスP、CGRPが重要キーワード
  • フレア(紅斑)は軸索反射の視覚的指標

第3回-146

深部痛覚の特徴について誤っている記述はどれか。

  1. 痛みの局在が明瞭な場合が多い。
  2. 骨格筋の反射性収縮を起こすことが多い。
  3. 痛みの感受性には部位差がある。
  4. 自律神経反射を伴うことが多い。

第4回-149

体性-内臓反射における遠心路を構成する神経線維はどれか。

  • AβとB
  • BとC
  • BとB
  • AγとB

第6回-148

ゲートコントロール説で正しいのはどれか。

  1. 脊髄における鎮痛機序の学説
  2. 脳内モルヒネ様物質の学説
  3. 発痛促進物質の学説
  4. 過剰刺激と自律神経との学説

第7回-147

次のうち刺鍼により一番早く起こる現象はどれか。

  1. 自律神経の興奮
  2. 刺鍼刺激の認知
  3. 後角細胞の興奮
  4. 痛覚閾値の低下

第7回-150

痛覚を抑制する生体機構でないのはどれか。

  1. レニン・アンジオテンシン系
  2. 下行性抑制系
  3. オピオイドの産生
  4. 脊髄膠様質細胞(SG細胞)

第9回-149

内因性オピオイドが関与するのはどれか。

  1. 下行性抑制系
  2. ナトリウムポンプ
  3. TCAサイクル
  4. レニン・アンジオテンシン系

第10回-146

ポリモーダル受容器からの求心性神経線維の特徴で誤っているのはどれか。

  1. 細い神経線維である。
  2. 振動感覚を伝える。
  3. 疼くような痛みを伝える。
  4. 伝導速度が遅い。

第12回-148

鍼刺激の局所に出現する現象で適切でないのはどれか。

  1. CGRPの分泌抑制
  2. 微細な組織損傷
  3. ポリモーダル受容器の興奮
  4. 内因性発痛物質の生成

第12回-149

エンケファリンの構成成分はどれか。

  1. リン脂質
  2. 不飽和脂肪酸
  3. グルコース
  4. アミノ酸

第13回-149

鍼麻酔について誤っている記述はどれか。

  • 筋収縮が得られる刺激で発現する。
  • 効果発現までに誘導時間が必要である。
  • 細径線維が関与する。
  • 意識レベルが低下する。

第15回-147

乳様突起下端の後下方にあるトリガーポイントを刺激すると頭頂部に関連通がみられた。罹患筋はどれか。

  1. 棘下筋
  2. 頭板状筋
  3. 菱形筋
  4. 咬筋

第17回-150

脊髄の部位で痛覚を伝える一次求心性ニューロンがシナプスを形成するのはどれか。

  1. 後索
  2. 前索
  3. 後角
  4. 前角

第18回-148

鍼麻酔の特徴として適切でない記述はどれか。

  1. 患者の意識がある。
  2. 鎮痛効果に個体差がある。
  3. 鎮痛の発現に時間がかかる。
  4. 筋は弛緩する。

第19回-147

鍼刺激による鈍い響き感覚を伝える脊髄内伝導路はどれか。

  1. 錐体路
  2. 皮質脊髄路
  3. 後索路
  4. 脊髄視床路

第19回-148

鍼麻酔の特徴について正しい記述はどれか。

  1. 患者の意識は保たれる。
  2. 鍼刺激終了直後に鎮痛効果が消失する。
  3. Aβ線維が関与する。
  4. 鍼刺激開始直後から鎮痛効果が発現する。

第19回-149

下行性痛覚抑制系に関係するのはどれか。

  1. 脊髄背側索
  2. 脊髄灰白質中間質
  3. 内側毛帯
  4. 海馬

第22回-149

刺鍼により起こる軸索反射について正しいのはどれか。

  1. 内因性オピオイドが関与する。
  2. 反射中枢は脊髄にある。
  3. 血漿が漏出する。
  4. Aβ線維の興奮によって起こる。

第23回-149

右腓腹筋の緊張が亢進しているとき、右承山に刺鍼したところ筋緊張が軽減した。関与したと考えられるのはどれか。

  1. 自原抑制
  2. 屈曲反射
  3. 伸張反射
  4. 相反抑制

第27回-145

痛覚の二次性ニューロンが上行するのはどれか。

  1. 脊髄背側索
  2. 脊髄後索
  3. 脊髄前側索
  4. 内側毛帯

第27回-150

トリガーポイントの発現に直接関与するのはどれか。

  • 副交感神経活動の亢進
  • 侵害受容器の感作
  • 内因性オピオイドの遊離
  • 筋血流の増加

第28回-146

内臓痛について誤っているのはどれか。

  1. 痛みの局在が不明瞭である。
  2. 関連痛の出現に関与する。
  3. 脊髄後角の広作動域ニューロンに接続する。
  4. Aβ線維により伝達される。

第28回-147

痛覚の中枢内伝導路で情動行動、自律神経機能や痛みの制御の調節に関与すると考えられているのはどれか。

  1. 前脊髄視床路
  2. 脊髄網様体路
  3. 新脊髄視床路
  4. 後索路

第29回-168

痛覚の一次性ニューロンが二次性ニューロンに交代する部位はどれか。

  1. 脊髄後角
  2. 脊髄前角
  3. 薄束核
  4. 楔状束核

第31回-166

痛みの識別に関与する中枢内伝導路はどれか。

  1. 後索路
  2. 新脊髄視床路
  3. 脊髄網様体路 
  4. 前脊髄視床路

第31回-167

四肢や体幹からの痛覚情報を伝える三次ニューロンが局在するのはどれか。

  1. 視床後外側腹側核
  2. 尾状核
  3. 赤核
  4. レンズ核

第28回-148

刺鍼時のフレア形成に関与するのはどれか。

  • 軸索反射によるCGRP放出
  • 交感神経節後線維の興奮
  • 脊髄後角でのガンマアミノ酪酸(GABA)放出
  • 視床腹側基底核群の興奮

血流改善

鍼刺激には局所および全身の血流を改善する効果があるとされており、多くの臨床現場でも「冷え症」「筋緊張」「慢性疼痛」「自律神経失調」などの症状改善に用いられています。

ここでは、血流改善の生理的メカニズムについて、国家試験の出題ポイントとあわせて整理します。

血流改善の主なメカニズム

  • 軸索反射による末梢血管の拡張(サブスタンスP・CGRP)
  • 筋緊張の緩和により筋内圧が低下し血流が促進
  • 交感神経抑制による血管拡張作用(反射性)
  • 一酸化窒素(NO)放出による血管弛緩作用

特に軸索反射とNO(Nitric Oxide)は、鍼灸領域でも注目されており、どちらも血管拡張・血流増加をもたらすことが研究で示されています。

メカニズム血管反応関与物質
軸索反射局所血管拡張サブスタンスP、CGRP
反射性調節遠隔部の血流増加自律神経系
一酸化窒素(NO)平滑筋弛緩NO、シクロオキシゲナーゼ系
鍼刺激による血管反応と関与物質

国家試験で問われる要点

  • サブスタンスP・CGRP → 軸索反射による局所血管拡張
  • 交感神経抑制 → 全身の末梢血流増加
  • NO放出 → 鍼刺激による血管弛緩

これらの反応は、鍼灸による冷え症・筋緊張型頭痛・筋膜性疼痛症候群(MPS)などの治療効果に寄与します。

特に肩こりや腰痛では、筋肉の過緊張や血流不足が症状の一因となっているため、血流改善効果が重要となります。

臨床応用の視点

  • 刺鍼直後の皮膚の発赤は血管拡張反応
  • 慢性的な循環障害では定期的な鍼刺激が効果的
  • 深部筋・トリガーポイントへの刺鍼で血流回復を図る

このように、鍼刺激による血流改善は、神経生理学的・化学的メカニズムが複合的に関与しており、それが即時的・持続的な治療効果につながります。

国家試験では軸索反射とNO、交感神経のキーワードをしっかり押さえておきましょう。

第15回-148

鍼刺激局所の血流増加が筋肉痛を改善するのはどれか。

  1. 下行性抑制系
  2. 広範囲侵害抑制受容器
  3. Ib抑制
  4. 軸索反射

第20回-148

鍼刺激による血流改善に関与するのはどれか。

  1. 交感神経節後ニューロンの興奮
  2. 軸索反射によるCGRPの放出
  3. 刺鍼部位でのセロトニンの遊離
  4. 尾側延髄腹外側部の興奮

第26回-146

鍼刺激による筋血流の増加に直接関与しないのはどれか。

  1. CGRP
  2. オピオイドペプチド
  3. 血管作動性腸ペプチド
  4. サブスタンスP

第27回-146

鍼刺激による筋血流増加に関与しないのはどれか。

  1. ポリモーダル受容器
  2. CGRP
  3. 一酸化窒素(NO)
  4. α受容体

第29回-170

血管内皮細胞で産生され、血管平滑筋を弛緩させる物質はどれか。

  1. セロトニン
  2. 一酸化窒素(NO)
  3. アセチルコリン
  4. ノルアドレナリン

第32回-170

鍼刺激による皮膚の血流増加に関係するのはどれか。

  1. NO
  2. セロトニン
  3. アンジオテンシン
  4. ノルアドレナリン

第26回-145

鍼刺激を行った際に細径感覚神経繊維が興奮したことを示すのはどれか。

  1. アディロニアの発現
  2. 刺入抵抗感の減少
  3. しびれるような響き感覚の発生
  4. フレアの出現

🌟治効理論

鍼灸治療は、単なる局所刺激にとどまらず、中枢神経系・自律神経系・免疫系・内分泌系など、全身性の作用を通じて身体機能に調整を加える治療法です。

ここでは、国家試験で頻出の「鍼の治療的作用」について、生理学的・臨床的な観点から整理します。

治療的作用

興奮作用神経の働きが低下している部位に刺激を加えることで、運動麻痺や知覚鈍麻の改善を図る。
鎮静作用疼痛・痙攣・過緊張などの過剰な神経興奮を抑える。交感神経抑制や下行性抑制系が関与。
誘導作用健常部を刺激して患部への血流を誘導する。例:健側刺鍼、関連部位への刺激。
鎮痛作用内因性オピオイド(エンドルフィンなど)や、ゲートコントロール理論による痛みの緩和。
防御作用白血球の大食作用を促進し、生体防御力を高める。
免疫作用リンパ球増加、NK細胞活性化など、免疫系の賦活を促す。
消炎作用局所の血流改善と免疫活性化により、炎症を抑制する。
転調作用自律神経系や内分泌系に働きかけ、体質改善や恒常性の再調整を促す。
反射作用皮膚・筋肉・経穴の刺激を通じ、臓器機能を調整する遠隔反射。

国家試験でよく出るポイント

  • 「鎮静作用」は疼痛・痙攣・交感神経の抑制
  • 「興奮作用」は神経機能低下への刺激
  • 「転調作用」は体質改善・アレルギー体質の是正
  • 「反射作用」は皮膚・筋刺激 → 内臓機能調整
  • 「免疫作用」は白血球・NK細胞の活性化

臨床応用の視点

  • 肩こり・腰痛:筋緊張の緩和 → 鎮静・誘導作用
  • 冷え・自律神経症状:血流促進・交感神経抑制 → 転調・誘導作用
  • アトピー性皮膚炎:体質改善・免疫賦活 → 転調・免疫作用
  • 神経痛・慢性痛:内因性鎮痛物質の活性化 → 鎮痛作用

このように、鍼灸治療は多面的な作用を持ち、単なる局所の刺激ではなく、全身の調整を目的とする治療手段として捉えることが重要です。

特に国家試験では、作用の種類とその働きを正確に分類できるように整理しておきましょう。

第3回-148

自律神経失調症やアレルギー体質などを改善する鍼の作用はどれか。

  1. 転調作用
  2. 消炎作用
  3. 誘導作用
  4. 鎮静作用

第6回-144

アレルギー体質の改善を目的とする鍼の作用はどれか。

  1. 転調作用
  2. 誘導作用
  3. 鎮静作用
  4. 反射作用

第8回-148

常習性便秘に対する背部の鍼治療の効果はどの作用によるか。

  1. 誘導作用
  2. 防御作用
  3. 反射作用
  4. 転調作用

第11回-149

刺鍼局所の軸索反射が強く関与する治療的作用はどれか。

  1. 免疫作用
  2. 転調作用
  3. 止血作用
  4. 誘導作用

第27回-149

筋けいれんに対する鍼治療の目的はどれか。

  1. 転調作用
  2. 矯正作用
  3. 鎮静作用
  4. 防衛作用

🌟関連学説

鍼灸治療の生理的メカニズムを理解する上で重要な「関連学説」。

これらは東洋医学の臨床的経験則を、西洋医学の視点で裏付ける理論とも言えます。

国家試験や教科書では抽象的に登場することも多いため、以下に代表的な学説を整理し、キーワードと臨床的意義を併せてまとめました。

レイリー現象

  • 交感神経の異常興奮によって起こる末梢血管の過収縮。
  • 寒冷刺激やストレスで指先の皮膚色が蒼白→紫→赤に変化する三相反応が特徴。
  • 血管運動性障害、非特異性、非恒常性、障害の拡散などの特徴を持つ。
  • 過剰刺激に対して個体差がないのがポイント。
  • 鍼灸では、交感神経抑制や血流改善を目的に用いられる理論的根拠になる。

ストレス学説(Selye)

  • ストレス刺激に対する生体の反応を3段階に分類。
  • ①警告反応期(ショック相→反ショック相)
    ②反抗期(感作期)
    ③疲弊期 → 死
  • 交感神経-副腎髄質系や視床下部-下垂体-副腎皮質系が関与。
  • 長期ストレスは免疫力低下や自律神経失調を招く。
  • 鍼灸ではこの理論をベースに「転調作用」「自律神経調整」などの治効が説明される。

圧発汗反射学説

  • 片側胸部に圧を加えると、その側の発汗・皮膚温・血圧が低下し、反対側では逆の反応が生じる。
  • 交感神経反射による変化とされ、神経機能評価にも応用される。
  • 鍼刺激により交感神経活動を抑制したり、左右のバランスを調整する際の理論的背景となる。

サイバネティックス理論

  • 通信と制御理論に基づく、情報処理と自己調節の考え方。
  • 生体は恒常性(ホメオスタシス)を維持するために、フィードバック機構を用いて調整する。
  • 鍼灸刺激はこの調節系を活性化し、内臓機能や免疫系、自律神経を整えるとされる。
  • 経絡を通じた「気」の流れの調整を、サイバネティクス的に説明する試みもある。

国家試験対策まとめ

  • レイリー現象:交感神経の異常興奮/非特異性・非恒常性/個体差なし
  • ストレス学説:警告期→反抗期→疲弊期/HPA系とSAM系の反応
  • 圧発汗反射:交感神経反射の左右差による発汗変化
  • サイバネティックス:フィードバック機構/恒常性調節

これらの学説は、鍼灸治療の生理学的根拠や現代的な説明手段として重要です。

特に国家試験では「レイリー現象と交感神経」「ストレス段階の順序」「フィードバック機構」など、単語の意味だけでなく作用機序を問う問題が多いため、理解を深めておきましょう。

第1回-149

レイリー現象の特性で誤っているのはどれか。

  1. 交感神経系に加えられた過剰刺激によって血管運動性の障害が起こる。
  2. 過剰刺激によって現れる障害には個体差がない。
  3. 過剰刺激はいかなる種類の刺激でも障害が起こる。
  4. 刺激を受けた場所から遠く離れた臓器にも障害が起こる。

第11回-150

レイリー現象について正しいのはどれか。

  1. 刺激の種類に関係する。
  2. 病変には個体差がない。
  3. 障害は限局する。
  4. 血管運動性の障害である。

第4回-150

ストレス学説で交絡感作期ともいわれるのはどれか。

  1. 警告反応期の抗ショック相
  2. 疲憊期
  3. 警告反応期のショック相
  4. 抵抗期

第24回-150

ストレス学説において初めに加えられたストレッサーに対してのみ有効な抵抗を現す時期はどれか。

  1. 交絡感作期
  2. 反ショック相
  3. ショック相
  4. 疲憊期

第9回-150

ストレス学説で交絡抵抗が現れる時期はどれか。

  1. 抵抗期
  2. ショック期
  3. 抗ショック期
  4. 疲憊期

第19回-150

ストレス学説で交絡抵抗が現れる時期はどれか。

  1. ショック期
  2. 疲憊期
  3. 抗ショック期
  4. 抵抗期

第31回-170

ストレス刺激による交感神経活動亢進反応はどれか。

  1. 気管支収縮
  2. 血糖値低下
  3. 心拍数減少
  4. 深部体温上昇

第3回-142

ストレス学説における生体反応として関係のないのはどれか。

  1. 副腎皮質の肥大
  2. 十二指腸の潰瘍
  3. 胸腺の萎縮
  4. 脾臓の肥大

第4回-148

圧発汗反射の圧迫側の反応で正しいのはどれか。

  1. 鼻粘膜毛細血管の収縮
  2. 皮膚温の上昇 
  3. 発汗の減少
  4. 痛覚閾値の低下

第8回-150

圧発汗反射の学説で圧迫側に起こる反応として正しい組合せはどれか。

  1. 鼻粘膜毛細血管 ─── 収縮
  2. 発汗 ──────── 増加
  3. 血圧 ──────── 上昇
  4. 腋窩温 ─────── 低下

第5回-150

正しい組合せはどれか。

  1. ホメオスターシス ──── 条件反射
  2. ゲートコントロール ─── 筋性防御
  3. レイリー現象 ────── 交絡感作
  4. サイバネティックス ─── フィードバック

第6回-150

サイバネティックスの学説で提唱されたのはどれか。

  1. フィードバック
  2. 生体の全機性
  3. 脳幹網様体賦活系
  4. ホメオスターシス

第20回-150

サイバネティックスと関連するのはどれか。

  1. 緊急反応
  2. 条件づけ
  3. 交絡抵抗
  4. フィードバック機構

第10回-150

交感神経-アドレナリン系を中心として説明したのはどれか。

  1. サイバネティックス
  2. 緊急反応
  3. 汎適応症候群
  4. 過剰刺激症候群

第22回-150

「内部環境」という用語で恒常性について述べた人物はどれか。

  1. クロード・ベルナール
  2. ノーバート・ウイナー
  3. ウォルター・キャノン
  4. ハンス・セリエ

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