国家試験が必要な資格には、それぞれ法的に定められた法律があります。
法律に則って業務をしています。
もし違反すれば、罰則があります。
最近、睡眠薬を横流しをする利用者さん宅に「知らなかったでは済まされない」というフレーズの精神薬などの薬の横流しは犯罪であることを注意喚起するポスターを貼りました。
国家資格を持っている人は当然知っていなくてはいけない、知らなかったでは済まされない法律があります。
法律をしっかり守れば、何かあったときには守ってくれます。
独立開業する鍼灸師はしっかり法律関係を学ぶ必要があると思います。
看護学生の時は「保助看法」を学んだときは、自分には関係ないと思って、しっかりと勉強しませんでした。
病院など誰かに雇用されれば、雇用主が守ってくれるはずだから。。
だけど、雇用されていても守ってもらえないことを知りました。
独立開業するということは、なおさら誰も守ってくれません。
自分の身は自分で守らないとです。
誰かに雇用されようが、独立開業しようが、法律をしっかり学ぶことが大切です。
雇用されていても、知らない間に、犯罪の片棒を担いでいることもあるかもしれません。
そして、ちょっと法律をかじるだけでも、法律の抜け穴というものが見えてきます。
施術者の名簿
施術者の名簿
- 名簿作成により施術者を把握することが目的
- 免許の効力は名簿に登録されたときに発生する
- 国家試験合格発表日には業務開始はできない
- はり師、きゅう師名簿に登録されると業務を開始することができる
- 免許を紛失しても名簿に登録されている
- 免許を紛失しても業務を行うことができる
- 登録番号及び登録年月日
- 本籍地都道府県名、氏名、生年月日、性別
- 試験合格の年月
- 免許取消又は業務停止の処分に関する事項
- 再免許の場合にはその旨
- 書き換え交付又は再交付した場合には、その旨並びにその理由及び年月日
- 登録を消除した場合には、その旨並びにその理由及び年月日
※施術所の電話番号、現住所などは名簿登録事項ではない
本籍、氏名の変更•名簿の登録削除
名簿の訂正、名簿登録の消除は、本人などがその申請をしなければならない
名簿の訂正
氏名、本籍地都道府県名に変更が生じたときは以下の必要書類を揃えて、30日以内に厚生労働大臣に名簿の訂正を申請しなければならない
必要書類
- 申請書
- 戸籍謄本若しくは抄本
名簿登録の消除
- 本人の自発的意志
- 名簿の登録の消除を厚生労働大臣に申請し名簿から消除
- 取消処分
- 名簿の登録の消除申請を待たず名簿から消除
- 死亡・失踪宣告
- 死亡・失踪宣告から30日以内に死亡又は失踪の届出義務者が厚生労働大臣に名簿の登録の消除を申請しなければならない
必要書類
- 申請書
- 免許証
- 死亡診断書、失踪宣告書
試験
受験手続
厚生労働大臣に提出
提出書類等
- 受験願書
- 卒業証明書又は卒業見込み証明書
- 手数料
試験の施行
- 実技試験は行わない
- 不正行為があった場合
- 受験を停止し、受験を無効として受験停止処分(一定期間)
- 不正行為をして免許を取得した場合(虚偽•不正による免許取得)
- 免許無効又は取消+50万以下の罰金
鍼灸師の業務
業務の独占と業務の範囲
- 施術の業は免許の業務範囲に限られる
- あん摩、マッサージ、指圧とは、疾病の治療、保険または慰安の目的をもって、人の身体の各部をおし、ひき、もみ、なで、さすり、たたくなどの施術を行うことをいう
- はりとは、病気や身体の状態に応じ、一定の経穴又は皮膚の一定点にはりをもって刺激を加える施術をいう
- きゅうとは、病気や身体の状態に応じ、一定の経穴又は皮膚の一定点にもぐさ等燃焼物質を直接又は間接にせっしょくさせ、この発生する温熱を人体に作用せしめる施術をいう
※はりを業として行えるのは医師とはり師、きゅうを業として行えるのは医師ときゅう師
※医師はあん摩マッサージ指圧、はり、きゅう、柔道整復を業として行うことができる
「医師の業務」の中にあはきの業務内容が含まれているからであり、各免許を取得したからではない
医師の免許を持っていれば、例え東洋医学の知識がなくても「あはき」の業務ができるということかしら?
鍼灸師の独占の有無
- 業務独占:あり
- 資格取得者が独占的にその業務ができる資格
- あはき法第1条あはき師の業務独占
- 名称独占:なし
- 資格取得者以外の者にその資格の呼称の利用が法律で禁止されている資格
- あはき法に名称独占に関する条文なし
看護師は業務独占であり名称独占の資格なので、看護師免許を持っていない人が看護業務を行えないし、看護師とも名乗ることはできません。
理学療法士は業務独占はないけど、名称独占がある資格です。
リハビリを業務独占されてしまっては、看護師もリハビリが行えなくなってしまうから。。
あはき師は業務独占だけど名称独占はない資格です。
自称、あはき師と名乗ることができるということかしら?
・・・ということは、カイロプラクティックをして「自称マッサージ師です」と名乗ることができるということかしら?
耳ツボダイエットで「自称はり師」と名乗れるということ?
名称独占がないから自称マッサージ師やはり師が出てきてしまいます。
施術を受けるときは、施術者が国家試験に合格して名乗っているのか、しっかり確認が必要です。
鍼灸の施術に関する注意事項
あはき法第4条の関係
施術者は外科手術を行い、又は薬品を投与し、若しくはその指示をする等の行為をしてはならない
- 違反→医師法違反(3年以下の懲役又は100万円以下の罰金、又はその併科)
- 販売又は授与の目的で調剤→薬剤師法違反(上記と同じ)
※電気器具、光線器具の使用は、はり•きゅう術の業務の範囲内で行われるものに限って差し支えない
あはき法第5条の関係
あん摩マッサージ指圧師は医師の同意を得た場合の外、脱臼又は骨折の患部に施術をしてはならない
- 違反→あはき法違反「30万円以下の罰金•両罰規定」
両罰規定:行為者を罰するだけでなく、その法人又は人に対しても刑罰を科すこと
雇用主から違反行為を命じられた場合、雇用者側も罰せられます。
あはき法第6条の規定
はり師は、はりを施そうとするとき、はり、手指及び施術の局部を消毒しなければならない(消毒義務違反)
- 違反→あはき法違反「30万円以下の罰金」
あはき法第8条の規定
都道府県知事は、衛生上害を生じる恐れがあると認めるときは、施術者に対しその業務に関して必要な指示をすることができる
- 違反→あはき法違反「30万円以下の罰金」
施術所に関する規定
施術所の意義
施術所:施術者が公衆又は特定多数人のために施術を行う場所
施術所の届出
- 開設する場合:開設後10日以内に施術所所在地の都道府県知事(特別区は区長)に届け出る
届出事項:規則第22条
- 開設者の氏名及び住所(法人については名称及び主たる事業所の所在地)
- 開設の年月日
- 名称
- 開設の場所
- 業務の種類
- 業務に従事する施術者の氏名及び視力障害者についてはその旨
- 構造施設の概要及び平面図
※出張届に関して届出事項に記載なし
違反→あはき法違反「30万円以下の罰金•両罰規定」
※変更、休止、廃止、再開するときも同様に後10日以内に都道府県知事(特別区は区長)に届け出なければならない
違反→あはき法違反「30万円以下の罰金•両罰規定」
施術所の備えるべき要件
施術所の設備構造基準:規則第25条
- 6.6平方メートル以上の専用の施術室を有すること
- 3.3平方メートル以上の待合室を有すること
- 施術室は室面積の7分の1以上に相当する部分を外気に開放しえること。ただし、それに代わるべき適当な換気装置があるときはこの限りではない
- 施術に用いる器具、手指等の消毒設備を有すること
衛生上必要な措置:規則第26条
- 常に清潔に保つこと
- 採光、照明及び換気を十分にすること
- 温度、湿度などについては規定はない
施術所に対する都道府県知事の監督など
報告要求、臨検検査
- 都道府県知事は、施術者、開設者に必要な報告の提出を要求できる。また施術所に臨検し、構造設備、衛生状況を検査できる
- 虚偽の報告、拒否、妨害、禁避→あはき法違反「30万円以下の罰金•両罰規定」
- 臨検検査をする職員は身分を確定する証票を持たなければいけない
- 臨検検査は犯罪捜査のために認められたものではない
使用制限等
- 構造設備、または衛生上不適切が認められら場合、開設者に対し期間を定めて施術所の全部若しくは一部の使用制限、使用禁止処分を下すことができる。また構造設備の改善衛生上必要な措置を取ることを命じることができる
- 処分、命令違反→あはき法違反「30万円以下の罰金•両罰規定」
業務に関する届出
- 届出を怠る、又は不明確な届出→知事は改めて必要な報告の提出を命令
- さらに報告を怠る、虚偽の報告→あはき法違反「30万円以下の罰金•両罰規定」
施術所を開設して業務を行う場合
- 施術者に業務開始の届出は課してはいけない
- 施術所の開設と業務の開始は一致するとみなされる
雇われて業務に従事する場合
- 雇われている施術者自身が業務開始の届出は必要ない
- 開設者の施術所の届出事項として「業務に従事する施術者の氏名~」があるため
出張のみによって業務を行う場合
- 開始、休止、再開、廃止の旨を「その時」の住所地の都道府県知事(特別区は区長)に届け出る
- 施術者の住所を施術所とみなしているため
この届出をするだけで、開業したことになります。
施術所の設備基準の検査も必要ありません。
滞在による業務を行う場合
- 施術者の住所(施術所の所在地)の区域外で滞在(=宿泊を伴う)して業務を行う場合
- あらかじめ滞在地の知事に以下の項目を届け出る
- 施術者の氏名、住所、視力障害者である場合はその旨
- 業務の種類
- 業務を行う場所、期間
これはいい働き方ですね。
好きな時に好きな土地で、何なら旅行しながら、お小遣い稼ぎができます。
施術所の名称の制限
医療法第3条件1項と3項により、病院などこれに紛らわしい名称を用いてはならない
- 第1項:病院の治療(助産を含む)をなす場所であって、病院又は診療所でないものは、これに病院、病院分院、産院、療養所、診療所、診察所、医院その他病院又は診療所に紛らわしい名称を附けてはならない
- 第3項:助産所でないものは、これに助産所その他助産師がその業務を行う場所に紛らわし名称を附けてはならない
違反→医療法違反「20万円以下の罰金」
広告の制限:あはき法第7条
あん摩業、マッサージ業、指圧業、はり業若しくはきゅう業又はこれらの施術所に関しては、何人も、いかなる方法によるを問わず、次に掲げる事項以外の事項について、広告してはならない
- 施術者である旨並びに施術者の氏名及び住所
- 第1条に規定する業務の種類
- 施術所の名称、電話番号、所在地
- 施術日または施術時間
- その他厚生労働大臣が指定する事項(H11厚生告示第69号)
- もみりょうじ
- やいと、えつ(お灸の別名)
- 小児鍼(はり)
- 医療保険療養費支給申請できる旨(医師の同意が必要な旨明記)
- 予約に基づく施術の実施
- 休日又は夜間における施術の実施
- 出張による施術の実施
- 駐車設備に関する事項
- 法第9条の2第1項前段の規定による届出をした旨(都道府県知事に開設の届出をした旨のこと)
法第9条の2第1項前段
施術所を開設した者は、開設後十日以内に開設の場所、業務に
施術者の氏名その他厚生労働省令で定める事項を施術所の所定地の都道府県知事に届け出なければならない
「肩こり、腰痛」とか「骨盤矯正」とか「不調改善」とか書かれている接骨院を見かけたりするけど、本当は違反しているということね。
インターネットは見たい人が見るものだから、今のところは広告制限には入らないらしいです。
業務の停止
- 免許の欠格事由に該当し、免許取り消す程度に至らない場合、厚生労働大臣は期間を定めて業務の停止を命じることができる
- 業務停止処分を受けた施術者は身分の喪失しないが、その期間業務ができない
- 業務停止期間中に業務を行った場合
- 違反→あはき法違反「30万円以下の罰金」
- 無免許業務を行った場合
- 違反→あはき法違反「50万円以下の罰金」
秘密保持義務(守秘義務)
あはき法第7条の2
施術者は正当な理由がなく、その業務上知り得た人の秘密を漏らしてはならない
施術者でなくなった後においても同様
違反→あはき法違反「50万円以下の罰金•親告罪」
※親告罪:被害者からの告訴を必要とする
国家試験対策
届出日数
- あらかじめ:滞在業務
- したとき:出張のみ
- 5日以内:免許証の返納
- 10日以内:施術所の開設届
- 30日以内:名簿の訂正、削除申請
- 開業、廃業系:都道府県知事
- 免許、名簿系:厚生労働大臣
罰金金額
- 50万円以下
- 無免許業務
- 虚偽、不正による免許取得(免許無効又は取消)
- 秘密保持義務違反(親告罪)
- 試験委員の秘密保持義務違反、不正採点
- 30万円以下
- あマ師の医師の同意のない脱臼、骨折部への施術禁止違反(両罰規定)
- はり師の消毒義務違反
- 都道府県知事の施術者に対する業務に関する指示違反(医師の団体は知事に意見可)
- 施術所に関する報告要求、臨検検査違反(両罰規定に)
- 施術所に関する処分、命令(両罰規定)
- 施術所に関する届出業務違反(両罰規定)
- 出張、滞在による業務開始の届出について報告の怠慢、虚偽の報告(両罰規定)
- 広告制限違反(両罰規定)
- 業務停止期間中の業務
- 20万円以下
- 名称制限違反(医療法)
まとめ
大学生の時に、服飾科なのに一般教養として、日本国憲法の授業がありました。
その授業で、「憲法を学ぶことは自分に有利になることがあるから、少しでも自分の身になるように」と先生が言っていました。
年金は老後だけではなく、障がいや配偶者が亡くなった時にも年金がもらえます。
年金は若い世代はもらえないと言って、年金を払わない人もいるそうです。
Kagayaはもしもの時のための保険として年金は払っています。
法律や社会制度を学ぶことは自分の身を守ることになるので、しっかりと把握していきたいと思います。
国家試験にも問われる問題ですが、開業するときにも必ず必要な知識です。
↑の本にも開業するための知識が記載されています。