
🌟精・気・血・津液の概要
東洋医学において「精(せい)・気(き)・血(けつ)・津液(しんえき)」は、身体を構成し、生命活動を維持するうえで欠かせない基本物質です。
それぞれが独自の機能を持ちながらも相互に連携し、健康な心身のバランスを保っています。
これらの物質が不足したり、偏ったり、巡りが滞ることで、さまざまな病理が発生すると考えられています。
この4つの物質は「陰陽」の属性にも分類され、精・血・津液は陰液(身体を滋養・潤す)、気は陽気(身体を動かす・温める)に属します。
陰陽のバランスが崩れると、例えば「気虚」「血瘀」「津液不足」などの症状を引き起こします。
- 精:生命の根本。成長・発育・生殖の源となる。
- 気:生命エネルギーで、体温・血流・免疫に関与する。
- 血:身体を滋養し、精神の安定にも深く関係。
- 津液:体内の水分全般を指し、臓腑や皮膚の潤いを維持。
これらの物質は、それぞれ独立して存在するのではなく、互いに変化・生成される関係にあります。
たとえば、精から気が生まれ、気は血や津液の生成・運行を促進します。
逆に、気が不足すれば血や津液の巡りが滞り、血虚や乾燥などの病態を招くこともあります。
このような概念を理解することで、「なんとなくだるい」「冷えやすい」「乾燥しやすい」「イライラする」といった現代人によく見られる不定愁訴に対して、東洋医学的なアプローチで原因を捉え、ケアするヒントが見えてきます。
物質 | 主な生理作用 | 分類・特徴 |
---|---|---|
精 | 生殖・成長・臓腑の滋養・気血の化生・神の土台 | 先天の精/後天の精(腎に貯蔵) |
気 | 推動・温煦・固摂・防御・気化などの全身調整機能 | 原気・宗気・営気・衛気 など多種 |
血 | 滋養・精神安定・栄養物質の運搬 | 営気+精+津液から生成。肝と関係深い |
津液 | 潤いの維持・濡養・血脈の補助 | 津(さらさら)/液(ねばねば)の二分類 |
この「精・気・血・津液」のバランスこそが、東洋医学の診察・治療・養生の根幹です。
日々の生活でこれらを意識することで、病を未然に防ぎ、健康寿命をのばすことにもつながります。
🌟精
精とは?生命の源となるエネルギー
「精(せい)」は、東洋医学における生命の根本物質であり、身体の成長・発育・生殖・再生・老化に深く関わっています。
精が充実していることは、健康と若さ、そして活力の証とされ、反対に精が不足すると「腎精不足(じんせいぶそく)」と呼ばれるさまざまな不調が現れます。
- 気・血を化成:精は体内で気や血に変換される源物質です。
- 神の維持:精神活動(神)の安定に必要なエネルギーでもあります。
- 腎精として腎に蓄蔵:精は腎に貯えられ、必要時に各臓腑へ供給されます。
- 臓腑の滋養:五臓六腑や筋骨、髄、脳、皮膚などの生理活動を支えます。
精には大きく分けて「先天の精」と「後天の精」があります。
先天の精は両親から受け継いだもので、胎児期から蓄えられ、成長・発育の原動力となります。
一方、後天の精は飲食物から得た栄養を脾胃が消化吸収して作られるもので、日々の生活習慣により増減します。
精が不足する「精虚」の状態になると、以下のような症状が見られます。
- 先天不足:体質的に弱く、発育が遅れる
- 化成不足:飲食不良や脾腎の機能低下によって精が作れない
- 消耗過多:慢性疲労や過労、不摂生による精の浪費
- 成長障害:身長が伸びない、歯が弱い、虚弱体質
- 生殖障害:不妊症、無月経、性欲低下、勃起不全など
- 老化症状:髪の脱毛、白髪、耳鳴り、腰膝のだるさ
- 髄海(脳)の空虚:健忘、めまい、難聴、集中力低下
現代人はストレスや過労、栄養不足などにより、精を消耗しやすい生活を送っています。
鍼灸や漢方などの東洋医学的アプローチでは、腎精を補うことによって、若さ・活力・生殖力の維持を目指します。
養生法としては、十分な睡眠・栄養・節制・腎を温めることが推奨されます。
生体の活力として働く気の類に含まれるのはどれか。
- 精
- 魂
- 体
- 血
成長や生殖活動を行うもととなる基本的な物質の生理作用で最も適切なのはどれか。
- 体温を一定に保つ。
- 神を維持する。
- 血脈を満たす。
- 呼吸を推動する。
腎精の不足が最も疑われるのはどれか。
- 息切れ
- 食欲不振
- 不妊
- 目のかすみ
🌟気
気とは?生命活動を支える陽気のエネルギー
「気(き)」は東洋医学において、身体の活動を推進するエネルギーとして捉えられます。
目には見えませんが、気は体内を巡り、臓腑や器官の働きを活性化し、生命を維持する基盤となる存在です。
気にはさまざまな種類と作用があり、それぞれが密接に関係しながら全身を支えています。
以下に、気の分類とその特徴を詳しく見ていきましょう。
- 原気:先天の精から生じ、三焦を通じて全身に分布。生命活動の原動力。
- 宗気:胸中に集まり、心肺の活動を助け、呼吸や発声に関与。
- 営気:血とともに脈中を流れ、全身を滋養。血の栄養的側面を担う。
- 衛気:体表を巡り、外邪から体を守るバリア機能。皮膚の開閉(腠理)や体温調節を担う。
気は「先天の精」(親から受け継いだ力)と「後天の精」(飲食や呼吸から得る栄養)によって構成されます。
後天の精は主に脾胃の消化吸収機能、肺の呼吸機能によって気へと変化し、以下のように分類されます。
- 脾:水穀の精微を吸収→営気・衛気の源となる
- 肺:清気(空気)を吸収→宗気の生成
- 腎:先天の精から原気を生成
また、気は以下のような生理作用を持っています。
- 推動作用:血や津液の運行を助け、臓腑を動かす
- 温煦作用:体を温め、代謝を促進
- 固摂作用:汗・尿・血液の漏れを防ぎ、体内にとどめる
- 防御作用:外邪(風・寒・湿など)から体を守る
- 気化作用:体内物質の変化を促す(例:水が汗になる、食物が気血になる)
このように「気」は、まさに身体の“エンジン”のような存在。
気が不足する「気虚」では、疲労感・息切れ・無力感・冷えなどの症状が現れます。
生活の中では、気を補う「補気(ほき)」を意識し、適度な運動や規則正しい食生活を心がけることが重要です。
気
元気の説明で正しいのはどれか。
- 夜間に人体の陰の部を二十五周する。
- 血とともに脈中を行く。
- 先天の精が変化生成したものである。
- 清気とも言う。
気について正しいのはどれか。
- 衛気は臓腑を温める。
- 営気は呼吸を推動する。
- 宗気は臍下丹田に集まる。
- 原気は津液を血に変化させる。
気について誤っている記述はどれか。
- 営気は血とともに脈中を流れる。
- 衛気は水穀の精気のことをいう。
- 宗気は胸中に集まる。
- 真気は温煦作用を持つ。
後天の精を生成する臓で中心となるのはどれか。
- 肝
- 脾
- 腎
- 心
宗気
胸中に宿る気はどれか。
- 衛気
- 栄(営)気
- 宗気
- 元気
肺に作用して発声・呼吸を推動するのはどれか。
- 宗気
- 元気
- 営気
- 衛気
宗気について適切なのはどれか。
- 経絡の機能を維持する。
- 脈外をめぐる。
- 胸中に宿る。
- 栄養を主る。
胸中に集まる気について正しいのはどれか。
- 栄養分をもつ。
- 発声に関わる。
- 発汗を調整する。
- 発育を促す。
営気
脈中を行き、血をめぐらすのはどれか。
- 営気
- 衛気
- 原気
- 宗気
津液を血に変化させ脈中を行き、全身を栄養する気はどれか。
- 宗気
- 営気
- 原気
- 衛気
衛気
脈外をめぐる気はどれか。
- 営気
- 経気
- 宗気
- 衛気
外邪に対する防御的役割をするのはどれか。
- 衛気
- 経気
- 宗気
- 営気
腠理の開閉を調節するのはどれか。
- 宗気
- 営気
- 衛気
- 元気
後天の精から得られた水穀の悍気はどれか。
- 胃気
- 衛気
- 営気
- 宗気
腠理の開闔を制御し、発汗を調整するのはどれか。
- 元気
- 衛気
- 宗気
- 営気
衛気について誤っているのはどれか。
- 分肉を温める。
- 腠理を開闔する。
- 陰性の気である。
- 脈外をめぐる。
衛気について誤っているのはどれか。
- 腠理の開闔を行う。
- 脈外をめぐる。
- 水穀の悍気のことをいう。
- 先天の精から得られる。
気の作用
気の作用で水穀の精微から血を作るのはどれか。
- 栄養作用
- 固摂作用
- 気化作用
- 温煦作用
気の作用で物質をエネルギーに変えるのはどれか。
- 温煦作用
- 固摂作用
- 推動作用
- 気化作用
津液や血の形成にかかわる気の作用はどれか。
- 推動作用
- 気化作用
- 温煦作用
- 固摂作用
津液を尿にする気の作用はどれか。
- 固摂作用
- 推動作用
- 温煦作用
- 気化作用
津液が汗や尿に変化する作用はどれか。
- 推動作用
- 気化作用
- 固摂作用
- 温煦作用
気の機能で血を脈外に漏らさないようにするのはどれか。
- 防御作用
- 温煦作用
- 推動作用
- 固摂作用
血を脈外に漏らさないようにするのはどれか。
- 気化作用
- 温煦作用
- 推動作用
- 固摂作用
血を脈外に漏らさないようにするのはどれか。
- 推動作用
- 固摂作用
- 温煦作用
- 防御作用
血を脈外に漏らさないようにするのはどれか。
- 温煦作用
- 固摂作用
- 推動作用
- 防御作用
真気の作用のうち「汗や尿がむやみに漏れ出るのを防ぐ」のはどれか。
- 推動作用
- 気化作用
- 防御作用
- 固摂作用
尿が漏れ出るのを防ぐ気の作用はどれか。
- 気化作用
- 固摂作用
- 温煦作用
- 推動作用
気の作用で正常な体温を維持するのはどれ1か。
- 固摂作用
- 気化作用
- 温煦作用
- 防御作用
津液の運行に最も関与する気の作用はどれか。
- 気化作用
- 防衛作用
- 温煦作用
- 推動作用
気の病症
気滞の症状はどれか。
- 手足のしびれ
- 脹痛
- 目のかすみ
- 出血
気滞の症状はどれか。
- 尿量減少
- 脹痛
- 顔面蒼白
- 息切れ
気滞の症状はどれか。
- 抑うつである。
- 食欲がない。
- 声に力がない。
- すぐ疲れる。
気滞の最も特徴的な症状はどれか。
- 胸のつかえ
- 食欲減退
- 筋けいれん
- 手のしびれ
気滞の症状でないのはどれか。
- 胸苦しい
- 腹部の脹った痛み
- 息切れ
- イライラ
次の文で示す患者の病証で最も適切なのはどれか。 「46歳の男性。主訴は肩こり。1年以上テレワークで外出機会が減少し、ストレスを感じている。胸肋部痛と喉のつかえ感を伴う。」
- 湿熱
- 血虚
- 陰虚
- 気滞
気機を上昇させる特性をもつ五志に損傷されやすい臓の症状はどれか。
- 不整脈
- 皮膚の乾燥
- 歯のぐらつき
- 目のかすみ
気の病証における虚証はどれか。
- 気陥
- 気鬱
- 気滞
- 気逆
🌟血
血とは?身体を養い精神を支える生命の液体
「血(けつ)」は、東洋医学において体の隅々に栄養を届け、精神の安定を保つ重要な基本物質です。
西洋医学の「血液」に近い概念ですが、それ以上に“精神活動とのつながり”が強調されるのが特徴です。
血は「営気」「津液」「精」から構成され、脾胃の働きにより水穀の精微から生じ、肺や心を介して全身を循環します。
主に「心」が血を巡らせ、「肝」が蓄えることで、そのバランスが保たれます。
- 営気:水穀から得られる陽性の栄養気で、血の一部として血脈中を流れる
- 津液:血液中の水分分画として潤いと粘性を支える
- 精:血を構成し、また補うための生命エッセンス
血の主な作用は以下の3つです:
- 滋養作用:臓腑・筋肉・皮膚・髪・目など全身の組織に栄養を与える
- 精神(神)の安定:血が充実していると心が安定し、睡眠や感情のコントロールも良好に保たれる
- 血の運行:心が推動し、脈中をスムーズに巡ることで全身へ滋養が届く
【血虚(けっきょ)】になると、めまい、顔色の悪さ、月経不順、不眠、目の乾燥、肌のカサつきなどが現れます。
【血瘀(けつお)】では、刺すような痛み、皮膚の色素沈着、月経痛など、血の巡りが悪くなることによる症状が起こります。
鍼灸や漢方では、血を補う「補血」や、血の巡りを良くする「活血」などの施術・処方が行われます。
栄養のある食事、規則正しい生活、ストレスコントロールが血の質と量の安定につながります。
血の説明で正しいのはどれか。
- 量は脾が調節する。
- 温煦作用により循環する。
- 衛気と共に脈中を流れる。
- 生成に営気が関与する。
血の生理作用はどれか。
- 体温を一定に維持する。
- 組織を栄養する。
- 外邪の侵入を防ぐ。
- 臓腑を温める。
血の作用で最も適切なのはどれか。
- 体温を正常に維持する。
- 全身の組織を栄養する。
- 人体を外邪から防御する。
- 成長・発育を促進する。
血の生成に関与する気はどれか。
- 清気
- 宗気
- 衛気
- 経気
血を生成し、血とともに脈中をめぐる気はどれか。
- 衛気
- 営気
- 清気
- 臓気
血について誤っている記述はどれか。
- 心によって推動される。
- 営気とともに脈中をめぐる。
- 肝に貯蔵される。
- 脾が各器官に配分する。
血について誤っているのはどれか。
- 肝、心との関係が深い。
- 後天の精から造られる。
- 営気と共に脈中を流れる。
- 体表部を潤し体温調節に関与する。
血瘀の特徴的な症状はどれか。
- 月経血量が少ない。
- 浮腫がある。
- ものを言うのがおっくうである。
- 刺すような痛みがある。
血瘀の症状はどれか。
- 顔面蒼白
- 色素沈着
- 視力減退
- 筋けいれん
「55歳の女性。皮下出血しやすく、皮膚はかさつき、腹が脹る。月経時に血塊を伴う。」 最も考えられる病証はどれか。
- 瘀血
- 血虚
- 水滞
- 気逆
瘀血の症状で適切でないのはどれか。
- 皮下出血
- 下痢
- 固定性の刺痛
- 腫瘤
瘀血の症状として適切でないのはどれか。
- 腫瘤がある。
- 固定性の刺痛がある。
- 顔色が黒い。
- 皮膚湿潤がある。
瘀血の症状で適切でないのはどれか。
- 腫瘤
- チアノーゼ
- 憂うつ
- 疼痛
🌟津液
津液とは?身体を潤す陰のエッセンス
「津液(しんえき)」は、東洋医学において体内の正常な水分を指し、あらゆる臓腑や組織を潤し、生命活動を円滑に保つ「陰液」のひとつです。
飲食物から得られた水分が脾の働きによって吸収され、全身に巡ることで、体内の潤滑・代謝・排泄など多くの役割を担います。
津液は性質により大きく2つに分かれます:
- 津:さらさらした液体。主に体表や四肢を潤し、汗・涙・唾液などに関与。
- 液:ねばねばとした濃い液体。骨髄・関節・内臓を潤し、深部に作用。
津液の主な作用は次の通りです:
- 滋潤作用:皮膚・粘膜・内臓を潤し、乾燥やかゆみを防ぐ
- 濡養作用:関節・筋肉・骨に柔軟性を与える
- 血脈を満たす:血液の量と粘度を保ち、血流の円滑化を促す
津液の生成と代謝には、以下の臓腑が関与しています:
- 脾:水穀の精微から津液を吸収し、三焦を通じて肺へ運ぶ
- 肺:津液を全身に輸布。一部は汗として体外に排出
- 腎:再吸収と排泄のコントロール。腎気は津液代謝を統括
- 肝:津液の輸布を補助し、気血とともに流通を助ける
- 三焦:津液が全身を巡るための「通路」として働く
このように、津液は単なる「水分」ではなく、生命の維持に必要な陰液として、各臓腑の連携により細やかに調整・分布されています。
津液が不足すると「津液虚」となり、口の渇き、肌の乾燥、便秘、関節のこわばりなどが生じます。補水と潤いを意識した生活習慣が大切です。
津液について正しい記述はどれか。
- 津液の代謝機能を三焦気化という。
- 津液は経脈を通じて全身に流れる。
- 津液が停滞する病理変化を津傷という。
- 津液は腎と膀胱で生成される。
津液について正しいのはどれか。
- 汗や尿となって体外に排泄される。
- 臓腑を栄養する。
- 生命活動の原動力となる。
- 精神活動の基本物質である。
津液について正しいのはどれか。
- 関節運動を円滑にする。
- 情報を伝達する。
- 精神活動の基本となる。
- 身体を温める。
津液について誤っているのはどれか。
- 脳髄を養う。
- 骨に潤いを与える。
- 皮膚に潤いを与える。
- 脈中を流れる。
津液について誤っているのはどれか。
- 水穀から分離される。
- 体温調節に関与する。
- 皮膚を潤す。
- 心により代謝が促進される。
津液を生成する臓腑はどれか。
- 心包
- 肝
- 脾
- 胆
津液の代謝に直接関係しない臓器はどれか。
- 脾
- 心
- 肺
- 腎
津液を散布する臓はどれか。
- 腎
- 脾
- 肺
- 肝
津液の代謝に関係しない臓腑はどれか。
- 肺・大腸
- 腎・膀胱
- 肝・胆
- 脾・胃
津液の不足による症状はどれか。
- 小便自利
- 自汗
- 口渇
- 目眩
津液の不足による症状でないのはどれか。
- 尿量減少
- 皮膚の乾燥
- 下痢
- のどの渇き
津液の停滞による症状はどれか。
- 下痢
- 盗汗
- 口渇
- しびれ
運行が失調すると鼓脹を認めるのはどれか。
- 営気
- 血
- 津液
- 衛気
🌟神
神とは?精神と生命活動を統括するエネルギー
「神(しん)」は、東洋医学において精神・意識・思考・感情・知覚といった心の働き全般を統括する存在であり、「命の輝き」とも言える重要な概念です。
単なる“こころ”の意味にとどまらず、生命力そのものとして捉えられています。
- 生命活動の総称:身体の働きが調和している時、「神」が充実していると考えます。
- 精神・意識を主る:意志、思考、感情、記憶、行動すべてに関与。
神は主に「心」に宿るとされ、心気の充実・血の豊かさ・精の安定によって健やかに保たれます。
したがって、神の状態は気・血・精との密接な関係にあり、これらが不足すると「神志異常」が発生しやすくなります。
神が乱れると以下のような症状が見られます:
- 不眠・多夢・興奮・錯乱・幻覚
- うつ状態・記憶力低下・集中困難
- 無気力・表情が乏しい・視線に力がない
神の状態は外見にも反映され、顔色・目の輝き・声・動作・態度などに現れます。
これを「神のあるなし」で診ることがあり、東洋医学において非常に重要な望診の指標の一つです。
また、神と密接に関わる「五志」や「七情」といった情志活動も以下のように分類され、過度な感情変化が五臓の機能異常に波及すると考えられます。
分類 | 怒 | 喜 | 思 | 悲 | 憂 | 恐 | 驚 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
五志 | 肝 | 心 | 脾 | ― | 肺 | 腎 | ― |
七情 | 肝 | 心 | 脾 | 肺 | 肺 | 腎 | 腎 |
神の調和を保つには、精・気・血を養う生活、安定した睡眠とリズム、ストレスコントロールが大切です。
養生・瞑想・鍼灸なども神を整える有効な手段とされています。
五志に含まれない七情はどれか。
- 恐
- 悲
- 喜
- 怒
強い怒りによって傷られる臓はどれか。
- 肝
- 腎
- 心
- 肺
肝を傷るのはどれか。
- 怒り
- 喜び
- 悲しみ
- 憂い
肝を傷る七情はどれか。
- 憂
- 喜
- 恐
- 怒
大喜が傷るのはどれか。
- 肺
- 肝
- 脾
- 心
脾を傷る七情はどれか。
- 憂
- 思
- 悲
- 怒
深い悲しみにより、病変が起きやすい臓腑はどれか。
- 脾
- 肺
- 肝
- 腎
七情のうち肺の病を引き起こすのはどれか。
- 思
- 恐
- 憂
- 喜
七情で腎を傷るのはどれか。
- 怒
- 悲
- 思
- 恐
五臓と七情との組合せで正しいのはどれか。
- 腎 ─── 喜
- 肝 ─── 恐
- 肺 ─── 怒
- 脾 ─── 思
五神の意を蔵すのはどれか。
- 腎
- 肝
- 肺
- 脾
🌟まとめ:東洋医学の五大要素「精・気・血・津液・神」
五臓六腑を支える生命エネルギーの理解
東洋医学における生命活動は、「精・気・血・津液・神」という5つの基本的な物質・エネルギーの働きによって成り立っています。
これらは相互に関係しながら、身体と心の調和を保つ役割を果たします。
- 精:生命の源。成長・発育・生殖に関与。腎に蓄えられる。
- 気:活動の原動力。全身の推動・温煦・防御・固摂・気化を担う。
- 血:栄養と精神活動を支える赤い液体。営気・津液・精から生成。
- 津液:体内の水分。津はさらさら、液はねばねば。滋潤と代謝を担当。
- 神:精神・思考・感情などの総称。心に宿り、全身の統括を担う。
これらのバランスが崩れると、虚弱・倦怠・不眠・月経異常・精神症状など、様々な不調として表れます。
現代においても、五大要素の観点から体調やメンタルを見直すことで、未病(病気の前段階)に気づき、予防につなげることが可能です。
鍼灸・漢方・養生法などは、この五要素の調整を目的として行われます。
学びを深めることで、日々のセルフケアや家族の健康支援にも役立つでしょう。