
病因について適切なのはどれか。
- 飲食不節は脾を損傷しやすい。
- 湿邪は心を損傷しやすい。
- 風邪は肺を損傷しやすい。
- 房事過多は肝を損傷しやすい。
病因についての記述で適切でないのはどれか。
- 風邪は肝をおかしやすい。
- 房事過多は腎をおかしやすい。
- 湿邪は心をおかしやすい。
- 飲食労倦は脾をおかしやすい。
🌟三因論とは?病気の3大要因を整理
東洋医学における病気の原因は、大きく「外因」「内因」「不内外因」の三つに分類されます。
これを三因論(さんいんろん)と呼び、人体の外側・内側・生活習慣という3つの視点から病因を考える理論です。
臨床においても、病因を見立てる上で基本かつ重要な考え方とされています。
- 外因:六淫(風・寒・暑・湿・燥・火)と疫癘など、自然環境の変化や気候によるもの。
- 風邪
- 寒邪
- 暑邪(熱邪)
- 湿邪
- 燥邪
- 火邪
- 陽邪:風・暑・燥・火(陰液を損傷しやすく、動きが活発)
- 陰邪:寒・湿(陽気を損傷しやすく、気血の停滞を引き起こす)
- 疫癘:インフルエンザや新型コロナなど、強い伝染力をもつ外邪
- 内因:七情(怒・喜・思・憂・悲・恐・驚)など、精神・感情の変化による影響
- 怒(肝)
- 喜(心)
- 思(脾)
- 憂・悲(肺)
- 恐・驚(腎・心)
- 不内外因:内因でも外因でもない病因。生活習慣や身体的ストレスが中心。
- 飲食不節(暴飲暴食・偏食・冷飲過多など)
- 労逸(労働過多・過度の安静・不規則生活)
- 房事過多(性生活の不摂生)
- 外傷(打撲・骨折・切創などの物理的損傷)
このように、三因論は自然環境・感情・生活習慣のすべてが健康と密接に関わっているという東洋医学の視点を示しています。
病を予防し、早期に対応するためにも、日常の中でこれらの因子に気づく力が求められます。
特に季節の変わり目やストレスの多い時期、生活が乱れがちなタイミングでは、三因それぞれへの配慮が重要です。
🌟外因:六淫と自然界の気による病因
外因とは、東洋医学において自然界の気候変化や環境要因が身体に悪影響を与えた結果として起こる病因のことです。
特に「六淫(りくいん)」と呼ばれる6つの外邪は、風・寒・暑・湿・燥・火の異常気象を指し、それぞれに対応する五行や臓腑、季節との関連性があります。
これらの外邪は、単独で侵入することもあれば、複数が組み合わさって発症することもあり、特に体力や衛気(バリア機能)が弱っているときに影響を受けやすくなります。
また、自然界の気が正常であっても、長時間の暴露や急激な変化によって病邪となることもあります。
外邪 | 季節 | 五行 | 五臓 | 陰陽 | 特徴 |
---|---|---|---|---|---|
風邪 | 春 | 木 | 肝 | 陽 | 軽揚性 開泄性 遊走性 衛気を犯す 百病の長 |
暑邪(熱邪) | 夏 | 火 | 心 | 陽 | 炎熱性 昇散性 湿邪を伴う |
火邪 | - | 火 | 心 | 陽 | 炎上性 気と津液を損傷する 生風 動血 |
湿邪 | 長夏(土用) | 土 | 脾 | 陰 | 重濁性 粘滞性 下注性 脾胃を損傷しやすい |
燥邪 | 秋 | 金 | 肺 | 陽 | 乾燥性 肺を損傷しやすい |
寒邪 | 冬 | 水 | 腎 | 陰 | 寒冷性 凝滞性 収引性 陽気を損傷しやすい |
この表のように、各外邪は季節や臓器と深く関係しており、例えば春に風邪(ふうじゃ)を受けやすい人は、肝の働きが乱れやすく、めまいや筋けいれんなどの症状が出やすいと考えられます。
また、風邪は百病の長といわれ、他の邪気の先導役として複合的な発症に関与することも多いため注意が必要です。
外因はどれか。
- 暑熱
- 飲食
- 外傷
- 労倦
外因はどれか。
- 疫癘
- 房事過多
- 外傷
- 七情
外因はどれか。
- 労倦
- 七情
- 疫癘
- 外傷
外因となるのはどれか。
- 癌の再発におびえていた。
- 妻子を亡くし生きる意欲を失った。
- 蒸し暑くて一睡もできなかった。
- 宝くじに当たって歓喜した。
病因のうち外因はどれか。
- 疲労
- 暑熱
- 七情
- 飲食
外因について正しいのはどれか。
- 湿邪は関節の腫れを起こす。
- 燥邪は脾を犯す。
- 暑邪は肺を犯す。
- 寒邪は素早く病を変化させる。
外邪の特徴で正しいのはどれか。
- 暑邪は肺を傷る。
- 風邪は津液を消耗する。
- 湿邪は身体下部を侵す。
- 燥邪は体表を侵す。
外因のうちで陰性の邪はどれか。
- 風邪
- 燥邪
- 湿邪
- 暑邪
外邪と疼痛の組合せで正しいのはどれか。
- 風邪 ─── 灼痛
- 寒邪 ─── 重痛
- 熱邪 ─── 掣痛
- 湿邪 ─── 酸痛
外邪とその特徴の組合せで正しいのはどれか。
- 湿邪 ――― 凝滞
- 暑邪 ――― 昇散
- 寒邪 ――― 重濁
- 風邪 ――― 動血
外邪とその性質との組合せで誤っているのはどれか。
- 寒邪 ─── 内風を生じる。
- 風邪 ─── 衛気を犯し、変化しやすい。
- 暑邪 ─── 気と津液を消耗する。
- 湿邪 ─── 脾胃を犯しやすい。
六淫とその特徴の組合せで正しいのはどれか。
- 風邪 ─── 陽気を損傷しやすい
- 暑邪 ─── 症状が変化しやすい
- 湿邪 ─── 気機を停滞しやすい
- 寒邪 ─── 津液を損傷しやすい
病邪と損傷する対象との組合せで正しいのはどれか。
- 風邪 ─── 営気
- 燥邪 ─── 血
- 湿邪 ─── 津液
- 火邪 ─── 気
外邪とその特徴の組合せで正しいのはどれか。
- 火邪 ――― 動血
- 湿邪 ――― 遊走性
- 風邪 ――― 収斂
- 寒邪 ――― 粘滞性
風邪(ふうじゃ)の特徴と影響
風邪(ふうじゃ)は六淫の中でもっとも先に侵入しやすく、東洋医学では「百病の長」とされる重要な外邪です。
性質としては軽く上に向かう「軽揚性」、外に開く「開泄性」、症状が移動しやすい「遊走性」を持っています。
また、体表を守る「衛気」を直接攻撃するため、悪寒・発熱・頭痛などの感冒様症状を引き起こします。
風邪は単独で発症することもありますが、寒邪や湿邪と組み合わさることが多く、風寒、風湿、風熱といった複合的な外感病を引き起こします。
そのため、原因の特定や治療法の選択には弁証論治が不可欠です。
- 風寒の邪:悪寒、無汗、頭痛、項背部のこわばり、鼻水など。
- 風熱の邪:発熱、微悪寒、咽喉痛、口渇、黄いろい痰など。
- 風湿の邪:関節痛、重だるさ、浮腫など。
風邪の影響を受けやすいのは春の季節や、季節の変わり目、冷暖房の影響で体温調整が乱れたときなどです。
また、肝との関係が深いため、ストレスや情緒の不安定さも風邪の侵入を助長する要因になります。
対策としては、普段から衛気を養うことが重要です。
適度な運動、冷え対策、睡眠をしっかりとり、体表の防衛力を高める生活を心がけましょう。
次の文で示す症状の病因はどれか。 「2日前から喉が痛む。鼻がつまり、頭が痛く、顔がむくむ。」
- 湿邪
- 燥邪
- 暑邪
- 風邪
次の文で示す外邪はどれか。 「百病の長ともいわれ、春に多く発病し、多くは皮毛から侵入する。」
- 燥
- 湿
- 風
- 寒
次の文で示す患者の症状を引き起こす六淫で最も適切なのはどれか。 「40歳の女性。昨日、外出後、頭痛、鼻づまり、咽喉部の痒み、眼瞼および顔面の浮腫が発生した。
- 風邪
- 暑邪
- 湿邪
- 寒邪
外邪で遊走性の痛みを起こすのはどれか。
- 燥邪
- 湿邪
- 火邪
- 風邪
肝を傷つけやすい邪気はどれか。
- 湿邪
- 風邪
- 寒邪
- 暑邪
六淫の風邪に冒されやすい臓はどれか。
- 脾
- 肝
- 肺
- 心
肝を傷りやすい病因はどれか。
- 妻を亡くし気力が湧かない。
- 口論で逆上した。
- 水を多量に飲んだ。
- 炎天下で野球観戦をした。
風邪について誤っているのはどれか。
- 下部を犯す。
- 陽の邪気である。
- 百病の長といわれる。
- 衛気を犯す。
暑邪(しょじゃ)の特徴と影響
暑邪(しょじゃ)は、夏の盛りに最も出現しやすい陽性の外邪です。
強い熱を帯びた気候の変化によって人体に影響を及ぼし、特に気分の悪化・口渇・発汗過多・発熱・脱力感といった暑気あたりの症状として現れます。
暑邪の特徴は炎熱性・昇散性で、上焦(頭・胸部)に影響を及ぼしやすく、体内の津液(しんえき)を消耗しやすい点にあります。
そのため、脱水や熱中症の症状に近い病態を生じやすくなります。
また、夏は湿度が高いことが多く、暑邪は湿邪と結びついて「暑湿」を形成しやすい傾向があります。
このときは、だるさ・食欲不振・下痢・関節の重だるさなど、胃腸を中心とした症状も見られます。
- 暑邪単独:高熱、口渇、多汗、煩躁(いらつき)、顔面紅潮など。
- 暑湿の邪:倦怠感、腹部膨満感、軟便、吐き気、手足の重さ。
暑邪は心との関連が深く、心火が亢進しやすくなるため、精神的な不安定さや不眠・多夢などの心神の症状も起こりやすくなります。
予防には、こまめな水分補給と、過度な冷房を避けつつ、適切な体温調整が必要です。
生脈散や五苓散などの漢方がよく用いられますが、重症化を防ぐためには休養と安静が第一です。
心を傷る外邪はどれか。
- 寒邪
- 燥邪
- 暑邪
- 湿邪
心を犯しやすい外邪の特徴はどれか。
- 症状の変化が速い。
- 気を傷つける。
- 痛みを引き起こす。
- 経過が長くなる。
湿邪(しつじゃ)の特徴と影響
湿邪(しつじゃ)は、六淫の中でも重く粘る性質を持つ外邪で、特に日本のように湿度が高い気候では影響を受けやすい邪気です。
特徴として重濁性・粘滞性・下注性があり、体の下部や関節、消化器系に停滞しやすい傾向があります。
湿邪は単独で侵入する場合もありますが、暑邪や寒邪など他の外邪と結びついて暑湿・寒湿といった複合邪を形成することも多く、これによりさらに症状が複雑化します。
- 湿邪の主な症状:体の重だるさ、関節痛、浮腫、無気力、頭重感、軟便、胸のつかえ。
- 暑湿:発熱、体のだるさ、食欲不振、軟便、吐き気。
- 寒湿:関節の冷痛、下痢、悪寒、尿の色が濃い、浮腫。
湿邪は特に脾(消化吸収機能)を傷つけやすく、「脾は湿を嫌う」とされるように、食欲不振・腹部膨満感・下痢などの胃腸症状として現れることが多くなります。
梅雨時期や長雨、じめじめした室内環境により体調不良を感じる人は、湿邪の影響を受けているかもしれません。
対策としては、湿を排出する作用のある食材(ハトムギ・小豆・生姜など)を取り入れることや、室内の除湿、適度な運動による発汗が効果的です。
漢方では五苓散・防已黄耆湯などがよく用いられます。
外邪で動きが遅く停滞する性質をもつのはどれか。
- 燥邪
- 湿邪
- 風邪
- 熱邪
外因で体重節痛を引き起こすのはどれか。
- 燥邪
- 風邪
- 湿邪
- 寒邪
寒邪(かんじゃ)の特徴と影響
寒邪(かんじゃ)は、六淫の中で最も陰性の性質が強く、冬季や寒冷環境により身体が冷えた際に侵入しやすい外邪です。
特徴としては寒冷性・収引性・凝滞性があり、体を内側から締めつけ、気血の流れを滞らせて痛みや冷えの症状を引き起こします。
寒邪に侵されると、悪寒、発熱、無汗、頭痛、関節の冷痛などの風寒感冒の症状をはじめ、筋肉・関節のこわばりや冷え性、不妊、頻尿などの慢性的な冷えに伴う症状として現れることもあります。
- 寒邪の主な症状:悪寒強く発熱軽い、無汗、関節の痛み(冷痛)、尿量増加、舌苔白・脈浮緊。
- 寒湿の邪:冷えとともに湿気による重だるさ、関節痛、浮腫、下痢など。
寒邪は陽気(身体を温める力)を損傷しやすく、特に「腎」との関係が深いため、腎陽虚や命門火衰といった虚寒性の体質に影響しやすいです。
そのため、高齢者や冷えやすい体質の方、疲労が溜まっている時期には特に注意が必要です。
対策としては、身体を温める食材(生姜、ネギ、シナモンなど)を積極的に摂取し、保温や入浴で外からの冷えを防ぐことが大切です。
漢方では桂枝湯、真武湯、当帰四逆加呉茱萸生姜湯などが用いられます。
外邪で収斂作用をもち、皮毛を収縮させるのはどれか。
- 風邪
- 湿邪
- 寒邪
- 暑邪
次の文で示す病証から最も考えられる邪気はどれか。 「冷たいビールを飲み、そのままクーラーの効いた部屋で寝て、下痢をした。」
- 寒邪
- 風邪
- 燥邪
- 湿邪
腎を傷りやすい病因はどれか。
- 房事過多
- 飲食不節
- 抑うつ
- 風邪
寒邪の特徴でないのはどれか。
- 収斂作用をもつ。
- 陰性の外邪である。
- 遊走性をもつ。
- 気血を阻滞する。
湿邪について誤っている記述はどれか。
- 津液を消耗しやすい。
- 陰性の邪気である。
- 重く停滞する。
- 脾・胃をおかしやすい。
次の文で示す患者の症状を引き起こす六淫はどれか。 「55歳の女性。梅雨の頃より頭や体が重く、四肢がだるくなり、関節が腫れ、下痢をするようになった。」
- 寒邪
- 暑邪
- 湿邪
- 風邪
「関節がだるく痛み、頭が重くなる。」の症状を引き起こす病邪の特徴はどれか。
- 開泄性
- 昇散性
- 収引性
- 粘滞性
次の文で示す症状を引き起こす六淫の性質に含まれるのはどれか。 「梅雨の時期から体が重く下肢がむくみ、下痢をするようになった。」
- 収引性
- 遊走性
- 粘滞性
- 昇散性
土用(長夏)の主たる気はどれか。
- 燥
- 湿
- 風
- 暑(熱)
関節の腫れを起こす病邪はどれか。
- 風邪
- 寒邪
- 燥邪
- 湿邪
火邪(かじゃ)の特徴と影響
火邪(かじゃ)は、六淫の中で最も熱性・攻撃性が強い陽邪であり、強い精神刺激や過剰な飲食、外部の暑熱によって内生または外感的に生じます。
風邪や暑邪から変化して発展するケースもあり、体内の気・津液を激しく消耗します。
その性質は炎上性(上昇する)で、上焦(頭部や顔面)に影響しやすく、口渇・発熱・便秘・顔面紅潮・イライラなど、明確な熱症状を呈します。
また、火邪は血分を傷つけやすく、動血・出血・瘡瘍・腫脹などの症状を引き起こすこともあります。
- 火邪の主な症状:高熱、のぼせ、口渇、精神不安、出血傾向、黄苔・紅舌。
- 心火亢進:不眠、多夢、焦燥、舌尖紅。
- 肝火上炎:怒りっぽい、目の充血、頭痛、めまい。
火邪は心との関係が深く、感情的ストレス(怒り・焦燥)によって火が生じると、心神の不安定を招き、精神症状をともなうことがあります。
特に「肝火」「心火」「胃火」として内熱が形成されると、さらに症状が複雑になります。
対策には、熱を冷ます清熱作用のある食材(苦瓜、緑豆、竹葉など)や、十分な水分、睡眠、心の安定が有効です。
漢方では黄連解毒湯、三黄瀉心湯、竜胆瀉肝湯などが代表的です。
外因の火邪に犯されやすい臓はどれか。
- 肝
- 脾
- 心
- 肺
六淫で生風を特徴とするのはどれか。
- 燥邪
- 火邪
- 暑邪
- 風邪
疫癘(えきれい):強い伝染力をもつ特殊な外因
疫癘(えきれい)は、六淫とは別に分類される特殊な外因で、伝染性・流行性の強い病邪を指します。
古代中国では、「疫癘の邪」として天然痘や疫病、瘟疫などを意味し、現代ではインフルエンザや新型コロナウイルスのような感染症全般が含まれます。
疫癘は、六淫のように季節や個人の体質によらず、強い毒性と感染力をもって不特定多数の人に伝播しやすい点が特徴です。
また、空気・水・接触・飛沫など多様な経路で広がることから、広範な予防対策が求められます。
- 疫癘の主な例:インフルエンザ、ノロウイルス、SARS、MERS、新型コロナウイルス、デング熱など。
- 感染経路:飛沫感染、接触感染、空気感染、水系感染など。
東洋医学では、これらを「疫毒」「湿毒」「瘟邪」などと表現し、邪毒が人体の正気を犯すことにより発病すると考えられます。
とくに「湿熱」として体内にこもると、発熱・咳嗽・下痢・倦怠感・味覚異常などの複雑な症状を呈することがあります。
治療・予防の要点としては、まず正気(免疫力)を保つことが基本です。
十分な睡眠・栄養・ストレス管理に加え、環境の衛生管理(換気・加湿・消毒)も重要です。
中医学では、銀翹散・藿香正気散・清瘟敗毒飲などが予防や初期治療に用いられます。
疫癘に該当するのはどれか。
- 徹夜の連続勤務
- 新型インフルエンザの蔓延
- 肉親との死別
- 急性アルコール中毒
疫癘について正しいのはどれか。
- 季節性がある。
- 発病は緩慢である。
- 強い伝染性をもつ。
- 生理物質の失調により起こる。
🌟内因:七情と臓腑の関係
内因とは、東洋医学において精神的・感情的要因が原因で病気を引き起こすものを指します。
とくに七情(怒・喜・思・憂・悲・恐・驚)の変動が大きく、長期的に影響することで五臓のバランスを乱し、さまざまな不調を生むと考えられています。
七情は通常、人体の自然な感情活動であり、適度であれば病にはなりません。
しかし、極端な感情の高まりや長期間の抑圧があると、気機の乱れを生じ、臓腑に影響を及ぼします。
これが「内傷七情」と呼ばれる状態です。
感情 | 影響を受ける臓腑 | 特徴的な症状 |
---|---|---|
怒 | 肝 | 気逆、頭痛、目の充血、易怒 |
喜 | 心 | 気緩、不眠、多夢、興奮 |
思 | 脾 | 気結、食欲不振、胃もたれ |
憂・悲 | 肺 | 気消、呼吸浅い、涙もろい |
恐・驚 | 腎・心 | 気下、夜尿、動悸、落ち着かない |
たとえば怒りは気を上昇させて肝を傷つけ、頭痛やめまい、不眠などの症状を生み出します。
また思い悩みは脾胃の働きを妨げ、食欲低下や消化不良につながります。
感情と臓腑は密接につながっており、心身一如の考え方が内因論の根底にあります。
予防には、日常的なストレスケアや睡眠・栄養の管理が重要です。
情緒の安定が健康の基本であり、漢方では柴胡加竜骨牡蛎湯、加味逍遙散、帰脾湯などが感情による内因の調整に用いられます。
内因はどれか。
- 房事過多
- 七情の乱れ
- 六淫
- 飲食労倦
内因はどれか。
- 猛暑の中でテニスをした。
- 窓を開けて一晩中夜風に当たった。
- 寝る前に冷たいビールを多量に飲んだ。
- 相手のミスに怒りが治まらない。
内因はどれか。
- 七情
- 飲食
- 六淫
- 労倦
内因によって起こる症状で正しいのはどれか。
- 心配ごとが多くて常に憂うつである。
- 多忙でだるさがとれない。
- 体を冷やして風邪をひく。
- 階段の昇降で膝が痛む。
🌟不内外因:生活習慣や外傷による病因
不内外因(ふないがいいん)とは、東洋医学において内因(七情)にも外因(六淫)にも分類されない病因を指します。
主に生活習慣の乱れや突発的な外傷、身体への物理的・生理的負担によって引き起こされる病気がこのカテゴリーに含まれます。
現代において最も関係が深いのがこの「不内外因」であり、ストレス社会における不規則な生活や食習慣、働きすぎ、睡眠不足などが多くの慢性疾患の背景にあります。
- 飲食不節:暴飲暴食・偏食・不衛生な飲食・冷たいものの摂りすぎ → 脾胃を傷つけ、消化器症状や倦怠感を引き起こす
- 労逸過度:過労や運動不足・睡眠不足 → 気血の不足、疲労、免疫力低下
- 房事過多:性生活の不摂生 → 腎精の消耗、不妊、腰痛、耳鳴りなど腎虚症状
- 外傷・虫咬・打撲:物理的な損傷 → 気血の停滞、瘀血、腫脹、痛み
また、不内外因は単独で病因となるだけでなく、内因・外因と相互に影響し合うことも多く見られます。
たとえば、過労により正気(免疫力)が弱り、そこに風邪や湿邪が侵入することで複合的な発病に至ることがあります。
予防と対策には、まず生活リズムの見直しが不可欠です。
バランスの良い食事、適度な運動、十分な睡眠と休養を取ることが基本であり、それに加えて心身のセルフケア(呼吸法・お灸・瞑想など)も効果的です。
体質に合わせた漢方(例:補中益気湯、六君子湯)も活用されます。
不内外因はどれか。
- 過度の怒り
- 暴飲、暴食
- 湿度の上昇
- 気温の低下
不内外因はどれか。
- 暑熱
- 喜怒
- 疫癘
- 飲食
不内外因はどれか。
- 疫癘
- 外傷
- 七情
- 六淫
不内外因によるものはどれか。
- 寝冷えをして下痢をする。
- 食べ過ぎて上腹部がはる。
- 炎天下に運動し熱がでる。
- 仕事がうまくいかず気がめいる。
不内外因でないのはどれか。
- 外傷
- 暑熱
- 過食
- 過労
次の文で示す患者の病因で最も適切なのはどれか。 「34歳の男性。1週間前に上司から販売業績が悪いことを責められた。それ以来、やる気がでない。 声に力がなく、食欲もない。」
- 怒
- 労倦
- 湿邪
- 飲食不節
次の文で示す患者の病因で最も適切なのはどれか。 「28歳の女性。年末年始に接客が多忙だった。その後、徐々に気力がなくなり、疲れやすく、接客がつらい。」
- 労倦
- 飲食不節
- 思
- 寒邪
🌟三毒説:血毒・水毒・食毒による病因
三毒説(さんどくせつ)は、主に日本の漢方医学において提唱されてきた理論で、病の原因を「血毒」「水毒」「食毒」の三つの体内毒によるものと捉える考え方です。
これは外因・内因・不内外因と並び、臨床上の実感や経験則に基づいた独自の視点として活用されています。
- 血毒:
- 血液の循環障害や停滞によって発生
- 瘀血(おけつ)・皮膚疾患・月経異常など
- 水毒:
- 津液の代謝・運搬異常によって痰・湿が発生
- 浮腫・めまい・耳鳴り・関節の腫れなど
- 食毒:
- 暴飲暴食・消化不良による食滞・傷食
- 胃もたれ・吐き気・腹痛・下痢など
これら三毒は互いに影響し合い、複合的な症状を引き起こすこともあります。
たとえば、水毒によって気血の運行が妨げられ、瘀血が生じるといった連鎖反応が見られます。
また、三毒は単なる体内物質の異常だけでなく、生活習慣やストレス、体質にも深く関連しています。
対策には、食事の改善、水分代謝の調整、血流促進、漢方による解毒作用などが挙げられます。
漢方処方としては、桂枝茯苓丸、五苓散、防已黄耆湯、平胃散などが三毒の状態に応じて活用されます。
三毒説と関係するのはどれか。
- 臓毒
- 食毒
- 脈毒
- 腑毒
三毒説と関係するのはどれか。
- 感情の乱れ
- 運動の不足
- 房事の過多
- 大便の停滞
🌟その他:東洋医学にみられる特殊な病証と痹証の分類
東洋医学では、現代医学では一括りにできない独自の病証が数多く存在します。
ここでは「消渇」「積聚」「癖」「厥」「疝」といった代表的な病証と、痹証(ひしょう)の分類について紹介します。
- 消渇(しょうかつ):口渇・多飲・多尿・体重減少が特徴。現代の糖尿病に類似。
- 積聚(しゃくしゅう):腹部に現れるしこりや腫瘤を表し、痛みを伴うことも。
- 癖(へき):風・寒・湿の邪が気血の運行を妨げることによる関節運動障害。
- 厥(けつ):気血の急激な逆行(厥逆)により意識喪失や冷えなどを生じる。
- 疝(せん):寒邪によって陰部〜小腹部にかけて引きつるような痛みが起こる。
これらの病証は、多くが気血水の偏りや寒邪・湿邪の影響と関係しています。
実際の治療では、舌診・脈診・腹診などをもとに証を判断し、個別に鍼灸・漢方を選定していきます。
痹証の分類と特徴
痹証(ひしょう)とは、風・寒・湿などの外邪が経絡を閉塞させ、関節や筋肉に痛みやしびれを引き起こす病証です。
以下のように分類されます。
主な邪気 | 痹証の型 | 特徴 |
風邪 | 行痹(こうひ) | 痛みが移動する、遊走性 |
寒邪 | 痛痹(つうひ) | 激しい痛み、寒冷で悪化 |
湿邪 | 着痹(ちゃくひ) | 痛む部位が一定、長引く |
これらの痹証は、高齢者や湿気の多い地域に多くみられます。
鍼灸では経絡の通りを良くし、寒湿を散らす治療が行われます。
以上が、東洋医学における代表的な特殊病証と痹証の分類です。
西洋医学では原因不明とされる痛みや違和感も、東洋的視点では明確な病因として扱えることがあります。
「消渇」の現代病名はどれか。
- 高血圧症
- 悪性新生物
- 糖尿病
- 心筋梗塞
気が逆行して起こる病の総称はどれか。
- 積聚
- 厥
- 疝
- 痹
痹証で遊走性の痛みを示すのはどれか。
- 行痹
- 熱痹
- 痛痹
- 着痹
痹証で重だるい痛みはどれか。
- 熱痹
- 着痹
- 痛痹
- 行痹
🌟まとめ
東洋医学では、病の原因を「外因」「内因」「不内外因」という三因に分類し、そこからさらに六淫・七情・生活習慣・外傷など細かく見立てていきます。
また、現代病に応用しやすい「三毒説(血毒・水毒・食毒)」や、特殊な症状としての「消渇」「癖」「厥」などの概念もあり、西洋医学では診断が難しいケースに対しても独自の視点でアプローチできる強みがあります。
特に痹証は、リウマチや神経痛、原因不明の関節痛などにも応用される重要な概念であり、風・寒・湿という外邪の影響を考慮して治療方針を立てる点が特徴的です。
このように、東洋医学の病因論は単なる迷信や過去の理論ではなく、今なお実臨床に活かせる重要な診察・治療指針となっています。