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腹診とは?東洋医学と西洋医学で見るお腹の診察法とセルフケアのすべて

🌟腹診とは何か? その重要性と今見直される理由

こんにちは。

プライマリ・ケアサポート きらぼし、鍼灸師・看護師のKagayaです。

「昔のお医者さんはお腹をちゃんと触ってくれたのに、最近の先生はパソコンばかり見て話を聞くだけ」…そんな声を、患者さんからよく聞きます。

確かに、最近はCTや血液検査などの画像・数値に頼る医療が増え、医師が患者さんのお腹に直接手を当てて診察する場面は少なくなりました。

でも、Kagayaはこう思うんです。

「脈とお腹と舌くらいは、フリだけでも診てほしい」と。

東洋医学では「四診(ししん)」という診察法があり、望診・聞診・問診・切診の中で、切診(触れること)は最も大切な診察手段のひとつです。

腹診(ふくしん)はまさにこの「切診」にあたり、お腹の状態を通じて五臓六腑のバランスや体調を読み取っていきます。

そしてこの考え方は、実は西洋医学でも同じ。

消化器内科や救急医療では、腹診によって「圧痛(押すと痛い)」「反跳痛(押して離すと痛い)」「筋性防御(自然に腹筋が緊張する)」などの身体所見から、病態を見分けることが基本とされています。

けれど、診察時間が短くなっている現代の外来では、こうした「触れて診る」診察が行われないことも多いのが現状です。

しかし鍼灸師やセラピスト、看護師にとっては、「手で感じる診察」こそが命です。

たとえば、お腹に触れたときの硬さ、冷たさ、温かさ、痛みなどは、身体からの小さなSOSサインとも言えます。

実際に、内臓の不調があると身体が自然と丸くなり、猫背になることもあります。

逆に、お腹の緊張がゆるみ、内臓が整うと、姿勢がスッと良くなる方もたくさんいらっしゃいます。

つまり、お腹は「自律神経」「消化」「感情」など、さまざまな心身の状態を映し出す鏡なのです。

東洋医学の古典にも「腹は五臓の鏡なり」と記され、昔から体調の変化は腹部に現れるとされてきました。

現代では、これを「内臓体性反射(ないぞうたいせいはんしゃ)」と呼び、内臓の異常が筋肉の緊張や皮膚の異常感覚として現れることが知られています。

ですから、たとえ医師が診なくても、私たちが「触れて気づく力」を持っていることは、とても価値のあることなんです。

あなたもぜひ、「お腹からの声」に耳を傾けてみてください。

少し触れただけで、硬さがある、冷えている、押すと嫌がる…。

そんなときは、身体が何かを伝えたがっているサインかもしれません。

腹診は、ただの技術ではなく、「やさしく触れて、聴く」という心のあり方でもあるのです。

次章からは、腹診における西洋医学的な所見や、東洋医学での五臓の反応点などを詳しく解説していきます。

🌟内科的触診:お腹の痛みから読み取る身体のSOS

お腹の痛みは、私たちが病院を受診するもっとも多い理由のひとつです。

でも、ひとくちに「腹痛」といっても、その原因は千差万別。正確に診断するためには、痛みの種類と部位を見極めることがとても大切です。

西洋医学では、腹部の痛みを以下のように分類します。

  • 内臓痛(ないぞうつう): 実際の病変部が痛むタイプ。鈍く広がる痛みが多く、消化管・肝臓・膵臓などが原因。
  • 体性痛(たいせいつう): 腹膜や皮膚、筋肉に由来する鋭い痛み。炎症や感染、外傷に多い。
  • 関連痛(かんれんつう): 病巣とは別の場所に痛みが現れるもの。神経のつながりにより、心臓の痛みが肩に出るなど。

この分類を理解することで、「どこが悪いのか」「緊急性が高いかどうか」を予測しやすくなります。

部位別:痛みと考えられる主な疾患一覧

痛みの部位関連する代表的な疾患
右上腹部胆石、胆嚢炎、急性肝炎、胸膜炎、尿管結石など
左上腹部急性胃炎、胃潰瘍、急性膵炎、尿管結石、脾腫など
臍(へそ)周囲腸閉塞、膵炎、総胆管結石、大動脈瘤、上腸間膜血栓症など
側腹部尿管結石、虚血性腸炎、腎盂腎炎、腎梗塞など
下腹部虫垂炎、便秘、大腸憩室炎、婦人科疾患(子宮外妊娠、卵巣出血)、膀胱炎、鼠径ヘルニアなど

このように、痛みの場所を把握すること=病態を見極める第一歩です。

たとえば、「右下腹部が痛い」なら虫垂炎、「左側腹部が刺すように痛い」なら尿管結石、「臍の周囲がズーンと重い」なら腸閉塞の可能性など、位置と痛みの質で絞り込みができます。

また、婦人科的な病気(子宮外妊娠や卵巣出血)では「急に激しい下腹部痛」が現れることもあります。

繰り返す腹痛・痛みの質の変化・冷汗を伴う痛みなどは、緊急性が高いこともあるため、早めに医療機関を受診してください。

もちろん、鍼灸や自然療法を選ぶ場合も、危険なサインを見逃さないことが最も重要です。

お腹を触ることで「押すと痛い(圧痛)」「押して離すと痛い(反跳痛)」「筋肉が勝手に緊張する(筋性防御)」といった反応があれば、炎症や出血が隠れているかもしれません。

腹診は、ただの触診ではなく、命を守る判断材料になり得る大切な技術です。

「たかが腹痛」と思わず、身体の声をしっかり聴いてあげましょう。

次章では、東洋医学における腹診の位置づけと「五臓の反応点」について詳しく解説していきます。

🌟東洋医学からみる腹診

西洋医学では、腹部の痛みを病変部位や臓器疾患から評価しますが、東洋医学では「五臓六腑のバランスの乱れ」を重視して腹診を行います。

お腹の状態を見ることで、その人の体質や気・血・水の滞り、冷えや虚実の傾向など、多くの情報を読み取ることができます。

東洋医学における腹診は、大きく分けて2つの系統があります。

  • 難経系腹診:五臓の位置を臍(へそ)を中心に配当し、その周囲の状態から臓腑の異常を探る方法
  • 傷寒論系腹診:腹部に現れる特徴的な反応(腹証)をもとに、証を立て、漢方薬などの治療方針を導く方法

この章ではまず、「難経系腹診」について詳しくみていきましょう。

難経系腹診とは?

『難経(なんぎょう)』とは、古代中国の医学書で、黄帝内経の理論をさらに発展させた内容がまとめられています。

その中でも有名なのが、「第十六難」に記された腹部における五臓の配当です。

この考え方は、臍を中心として身体の中心に五臓が分布しているというもので、今日の鍼灸診療でも腹診の基礎とされています。

臓腑腹部の位置
臍の左
臍の上
臍の中央
臍の右
臍の下

このように、それぞれの臓が担当するエリアに「硬さ」「圧痛」「動悸」などの異常反応が現れることで、その臓に関連する病態が推測できるのです。

  • 肝病は、臍の左に動気あり、これを按(お)せば牢(かた)く、もしくは痛む
  • 心病は、臍の上に動気あり、これを按せば牢く、もしくは痛む
  • 脾病は、臍の当たりに動気あり、これを按せば牢く、もしくは痛む
  • 肺病は、臍の右に動気あり、これを按せば牢く、もしくは痛む
  • 腎病は、臍の下に動気あり、これを按せば牢く、もしくは痛む
― 『難経』第十六難より

ここでいう「動気(どうき)」とは、腹部に触れたときに感じる拍動や鼓動のような反応のことを指します。

このような反応が「牢(かたい)」「痛む」などの異常を伴っている場合は、その臓に不調があると考えられるのです。

たとえば、「臍の左が硬くて痛い」と感じた場合は、肝の気の滞りや瘀血、肝うつ気滞などの肝病証が疑われます。

難経系腹診は、触診の所見から臓腑のアンバランスを読み取る診察技術であり、鍼灸や手技療法と相性の良い方法です。

次章では、もうひとつの代表的な腹診法「傷寒論系腹診」についてご紹介します。

🌟傷寒論系腹診とは?特徴と腹証の読み解き方

東洋医学における腹診のもう一つの大きな流派が、「傷寒論系腹診」です。

これは中国漢代の名医・張仲景(ちょうちゅうけい)が著した『傷寒雑病論』の中に記されている腹部の反応=「腹証(ふくしょう)」をもとに、病態や処方を導く診断法です。

臓腑の位置に注目する「難経系腹診」と異なり、「どのような反応がどこに現れているか」によって証を立てるのが特徴です。

以下に、傷寒論で特に重要とされる代表的な腹証を整理しました。

代表的な腹証と病態

  • 心下痞(しんかひ): みぞおちの不快感。自覚症状中心。
  • 心下鞕(しんかこう): みぞおちの他覚的な硬さ。触診でゴリッとした抵抗感。
  • 心下痞満: 痞え+膨満感。胃腸機能低下や寒湿など。
  • 心下軟: 押してふにゃっとする虚証の兆候。
  • 胸脇苦満(きょうきょうくまん): わき腹の張り。肝気鬱結、少陽病、柴胡剤の適応。
  • 小腹不仁(しょうふくふじん): 下腹部の無力感・鈍さ。腎精虚、命門の火の衰え。
  • 小腹急結(しょうふくきゅうけつ): 特に左下腹部(時計で4時の位置)にみられる硬結。瘀血によるもの。舌下静脈怒張や刺痛・絞痛が関連。
  • 裏急(りきゅう): 腹直筋の拘縮。腹裏拘急とも。虚労や冷えによる気血の停滞。
  • 虚里の動(きょりのどう): 左乳根あたりの動悸。心尖拍動に関係。気虚または心陽の異常。
  • 胃内停水(いないていすい): 胃内に水が停滞し、軽く叩くと「チャポチャポ」と音が鳴る。痰湿タイプ。

これらの腹証は「問診」や「舌診」などと組み合わせることで、より正確な弁証論治が可能になります。

たとえば、「小腹急結」がある場合は、瘀血(血の滞り)と考えられ、桃核承気湯(とうかくじょうきとう)などの活血化瘀薬が適応になります。

つまり、腹証から漢方の処方までつなげることができるのが、傷寒論系腹診の大きな特徴です。

一方、難経系腹診は「このエリアの反応=どの臓が不調か?」という考え方をベースにし、鍼灸や手技療法との相性が高いという特長があります。

難経系と傷寒論系、どちらが正しいの?

この問いに対する答えは、「どちらも正しい」です。

なぜなら、両者は目的が違うからです。

  • 難経系:鍼灸の臨床、経絡・臓腑理論に基づく身体所見の評価
  • 傷寒論系:湯液(漢方)治療を目的とした処方決定のための所見

どちらか一方を覚えるのではなく、それぞれの強みを理解し、使い分けることが臨床では重要になります。

ちなみに、国家試験ではこの両方が出題範囲になります。

腹診は、問診や舌診、脈診と並んで「証を立てるための根拠のひとつ」として、今後もますます重要になってくるでしょう。

腹診のイラスト

次章では、「健康的なお腹とはどんな状態か?」についても解説していきます。ぜひ実技でも意識してみてくださいね。

🌟健康な腹部とは?理想の腹部像と東洋医学の見方

腹診を通して最終的に知りたいのは、「この人の体は今、健康な状態かどうか?」ということです。

東洋医学では、腹部の状態は気・血・水の流れや五臓のバランスを反映すると考えられています。

では、「健康なお腹」とは具体的にどのような状態なのでしょうか?

以下に、東洋医学の腹診における“理想的な腹部の所見”をまとめました。

  • 温かく、潤いと艶がある: 皮膚がカサカサしていない、乾燥もなく、触れて自然な温もりがある
  • みぞおち(心下部)が平ら: つかえ感や膨隆がなく、指が自然に沈む
  • 下腹部がふっくら: 命門の気・腎精が充実している状態。冷えや虚のない証
  • 押しても痛みや抵抗がない: 圧痛、硬結、緊張が見られず、手が滑らかに入る
  • 動悸や冷感がない: 内臓の緊張や循環障害がない証拠

東洋医学では、これらの腹部所見を「五臓六腑の鏡」として捉えます。

とくに、下腹部がふっくらと温かいことは、腎(=生命力)や脾胃(=消化機能)がしっかりしている証とされ、非常に重要なポイントです。

反対に、冷たくてゴツゴツとした腹部や、触れたときに「押さないで!」と避けられるような部位がある場合、それは身体が発している不調のサインかもしれません。

臨床では、「健康な小児の腹部のような柔らかさ」を基準にすることが多くあります。

小児は気血が充実しており、筋肉の緊張も少なく、ストレスも少ないため、自然で理想的なお腹といえるのです。

つまり、腹診は“異常を探す”だけではなく、“健康の指標を確認する”という視点でもとても大切です。

患者さんに「いいお腹ですね、元気な証拠です」と声をかけると、表情が明るくなることもよくあります。

こうしたポジティブなフィードバックは、施術効果やセルフケア意識の向上にもつながっていきます。

お腹は感情の宿る場所とも言われ、「第二の脳=腸」とも関連します。

触れて、聴いて、感じて…。腹診は、患者さんと信頼関係を築く上でも、とても大きな意味をもつ診察法なのです。

次章では、こうした腹診の所見をもとに「どうケアすればよいか?」というセルフケア法もご紹介していきます。

🌟Kagaya式セルフケアで整える!お腹から全身バランス

東洋医学で「お腹は五臓六腑の鏡」と言われるように、腹部に現れる反応は体調を映すバロメーターです。

では、腹診で「冷えている」「張っている」「押すと痛い」などのサインがあったとき、どうすれば良いのでしょうか?

ここでは、Kagayaが日常的に実践しているお腹を中心としたセルフケアをご紹介します。

🟡お灸で「動気」や「圧痛」を緩和

腹診で押すと痛い、硬いと感じた部位には、台座灸(せんねん灸タイプ)がおすすめです。

  • 臍の下(関元、気海):腎の陽気を補い、冷えや生理不順に
  • 右腹部(肺):風邪をひきやすい人や慢性咳に
  • 左腹部(肝):ストレス性の胃腸不調、PMSに

火を使わない「温熱シール灸」や「電子お灸」も便利で、初心者でも安全に使用できます。

🟡腹巻とカイロで温活サポート

お腹が冷えていたり、下腹部がふにゃっとしている場合は「腎虚」のサイン。

その際は、腹巻+カイロのW使いがおすすめです。特に女性は生理痛や冷え性対策としても◎。

おすすめポイント:

  • カイロは関元(おへそから指4本下)または命門(腰の中心)に
  • シルク素材やウール素材の腹巻が通気性・保温性に優れる
  • 寝る前の保温で「夜間頻尿」や「眠りの浅さ」にも効果的

🟡3耳診で「お腹の声」を聞く

実は、耳にもお腹の状態が反映されていることをご存じですか?

東洋医学では、耳は腎と密接に関係し、また、耳介の下部(耳たぶの奥)に「腹部」の反応点があります。

  • 耳たぶの硬結や圧痛 → 消化器系の疲れ
  • 耳の冷たさ → 腎陽虚、気の不足
  • 耳の皮膚がくすむ → 血虚・瘀血傾向

耳をよく観察し、そっと揉むだけでもお腹まわりがポカポカしてくることもあります。

🟡食養生で「脾胃」を守る

お腹の張りや痛みがあるときは、食べる内容や食べ方も見直しましょう。

  • よく噛む(1口30回)ことで胃腸の負担を軽減
  • 温かい汁物・お粥を活用(冷たいもの・生ものは避ける)
  • 腹八分を意識し、夜遅くの食事は控える

「胃腸が整えば全身が整う」とも言われるように、消化吸収が改善されることで、免疫力・気力も上がってきます。

🟡5呼吸と姿勢で内臓をマッサージ

腹式呼吸を意識することで、横隔膜の動きが改善し、内臓にやさしいマッサージ効果が得られます。

さらに、猫背を避ける姿勢を意識するだけでも、腹部の血流や神経の流れが整ってきます。

自宅で1日5分、お腹に手を当てて「ゆっくり呼吸する」だけでも変化が起きますよ。

🌟まとめ:お腹に触れることは、身体と心を聴くこと

腹診は、東洋医学と西洋医学の両方において、身体の深い情報を得られる貴重な診察法です。

私たちが毎日当たり前に感じている「お腹の調子」は、実は全身のバランスや臓腑の状態、自律神経や感情までも映し出しています。

難経系腹診では、臍を中心に五臓の位置を見て、臓腑の異常を捉えます。

傷寒論系腹診では、腹部に現れる「腹証」から証を立て、漢方処方の判断を行います。

どちらも「身体からの声」を丁寧に聴くための、すばらしい技術です。

さらにKagaya式セルフケアでは、お灸・腹巻・温活・耳診・呼吸法など、自分の手でできるやさしいケアをお伝えしました。

自分で自分を触れて、感じる。

これだけで、身体はゆるみ、心はほっと安心してくれます。

誰かに治してもらうのではなく、自分の感覚で気づいて、整えていく。

その第一歩が、「お腹にやさしく手を当てること」なのです。

どうか、あなた自身の中にある「健康を守る力」を信じてあげてください。

きらぼしでは、訪問施術やサロンでの腹診・体質チェックも行っていますので、気になる方はお気軽にご相談くださいね。

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